所得格差 ⇒ 情報格差
2000年を迎え組合員の皆さんのご多幸とご健勝をお祈り申し上げ、例年のごとく淡々と発想転換ワードを謹んで贈呈します。
ついこの間まで、世界経済の模範とされていた日本経済が未曽有の落ち込みに混迷を深め、一方「3つ児の赤字」を抱え、世界経済のお荷物となったと思われていたアメリカ経済は100か月を超す長期成長路線でニューエコノミー論が過去の経済学説を覆そうとしています。
20世紀最後の10年間を「失われた10年間」と沈みがちな見解が聞かれるわが国の昨今ですが、この問題への解答は簡単といえるでしょう。
日本が「総中流意識」と言われるような所得平等化の中で遂げた経済発展を、遅れてヨーロッパやアメリカが享受していると理解してみることができます。
所得平等化については日本が世界先進国で最も最先端の実現国だったのです。
「隣のクルマが小さく見えます」の比較広告に見られるようなササヤカな願望を満たせば良かった日本では、所得の平等化で消費市場が爆発的に拡大し高度経済成長を実現して、遂に「飽和経済」に到達し、「買いたいものは無い社会」に到達しました。
ところがお城に住んだり、プール付き10ベッドルームの豪邸で執事と召使に囲まれてパーティのスケジュールに追われているヨーロッパやアメリカの最高の賛に満たされたエスタブリッシュメントには、満たされているが故に何世代に亙っての低成長経済であっても一向に意に介しなくて済んだのです。
ところが、20世紀末、ここに大きな異変が二つ起きました。
第一がヨーロッパでは長い間の労働争議を経て、所得の平等化が徐々に実現し、先進国のイギリス、フランス、ドイツと社会主義政権が誕生し、もう所得の平等化は後戻りしないでしょう。
アメリカは多民族国家として多くの移民を受け入れ、それがダーティワークを荷なう所得底辺層として、バックス・アメリカーナを支え、海外基地と赤字の原因は東西冷戦の盟主故に発生したものでした。
東西冷戦が解消し、軍事の民生への転換が図られ、レーガンの敷いたマイノリティの教育効果が実を結んで、所得の平等化が実現し、旺盛な需要がアメリカ経済の今日をもたらしたのです。
第二は、急速な情報の平等化です。
一部、特権階級や反社会的団体に握られ、思惑が作用した「情報所得者優先市場」が崩れ去り、情報が共有化され、それを活用する者のみに機会が与えられる「本物の市場経済」が実現したのです。
今からは、平等化された情報を駆使するものと、看過するものとの格差時代と言えるでしょう。 |