AICON  NEWS

Vol.30 (2000.3)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕


規模別賃金格差 ⇒ 成果別報酬格差


  「賃金」と聞く度に、「取るもの」とする労働者側と「削るもの」とする使用者サイドの対決の構図を作り上げたマルキシズムの残渣を想起する。
  労使対決がストに発展し、ぞくぞくと赤旗が立ち並び新幹線も航空機も全面ストップ。移動できないことを幸いに地方のゴルフ場に居座ったことも今は懐かしい思い出である。
  全国統一の賃金を要求し、受け入れられなければストライキ、企業倒産、そんな企業の続出こそプロレタリア独裁の平等な社会到来を促す理論武装したマルキシズムはソ連邦の崩壊で空論となった。
  筋金入りの闘士も「生産性原理」を否定し、失業者の群れに入ることを拒絶して、遂に今年は「春闘」なる言葉が死語となる年ともいわれる。
就業者の総数を占める労働組合員の数が12%までに低下して「昔、総評、今、気まぐれ消費者」と浮動性の高い感性行動に悩まされる今日、従来の慣行に歯止めがかかったことは当然というべきか。
  この間、賃金コンサルタントは何をしてきたか?反省すべきところ大である。
年功給の維持が不可能であることを理解させる労を避け、仕事の遂行能力をバロメータとする「職能給」なる発想を持ち出し、問題の先送りを図ったと批判されても、やむを得まい。
  パイを大きくすることにより、分配の公平、公正という名のもとに「職務分析」を行い複雑な格付けにより理論構築を図り、これを最も現代的賃金制度と唱える愚を冒したのである。
いまや、こんな小手先の美辞麗句は許されない。
マーケットの限界に到達し、あるいはマーケットの減少に陥った業界では「リストラ」という名の首切りが横行し、「年俸制」なる用語にカムフラージュされた「減給」が横行している。
それが遂に減給を公然と宣言する大企業を生み出し、同盟もチャンピオン闘争を断念し、ドイツの「ワークシアリング」に理解を示すまで様変わりしつつある。
  そこで「規模別の賃金格差」の是正を目指した時代は過去のものとなり、今後は「成果別の報酬格差」を当然とする時代に入ったものと指摘できるのである。プロ野球の選手がストーブリーグなる「報酬交渉」を繰り返すと同様に、社員も自分の働きによる成果である付加価値額を根拠に適性な「報酬」を要求する「個闘」を当然とする。
今のところ、去年の付加価値額の多少で今年の年収を決めるレベルに到達したところであるが情報処理の迅速化がやがて、前月実績により、当月報酬が決まるところに落ち着くのは、そう先で無いといえるだろう。
  ここに、今までの賃金指導のスキルを新たに変革すべきことに気付かねばならない。


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