AICON  NEWS

Vol.31 (2000.4)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

 
タックス・ヘブン ⇒ ネット・ヘブン


  従来、タックス・ヘブンは世界税制の不統一を武器に、ある国では非合法であっても他の国では犯罪にならない盲点を衝いて、公然と利用された。
「法律に書いてないことは、やってもよいこと」という弁護士の後ろ盾で堂々と「節税」という名の「脱税」が繰り返され、まかり通ってきた。
  これが、今、情報技術の世界にもネット・ヘブンとして登場している。
タックス・ヘブンは国の存在を前提に違法行為を合法的にすり替え、敢えてするものであり、国際租税条約の合意の前に根絶も可能である。
これに対して、ワールド・ワイド・ウェブの国境なきインターネットは一筋縄ではいかない怪物的存在となる危険性が極めて高い。
どこから発信しているのか掴めず、仮に分かってもネット上を転々とサーフィンして、掴まえ所がない代物だからである。
  最近の情報に寄れば、イギリス海峡に散らばっているチャネル諸島では医師の処方箋不要のインターネット薬局が堂々と営業しているという。
「ケミスト」と書かれた薬局の開店時間内に、医師の処方箋を持参しながら、病歴や既往服薬歴をこまごまと聞かれる面倒さを避けるには、もってこいである。
カリブ海のケーマン諸島もタックス・ヘブンの延長線上で米本土で許可制のインターネット・カジノが大盛況という。
アメリカ本土では州を越えてインターネット酒類販売が横行し、メリーランド州では「ホーム・ドクター」ならぬ「ネット・。ドクター」も現われ、医療行為ではなく、単なる医療情報提供に過ぎないと詭弁を弄しているという。
  電波や、光で物的証拠が残らず、手入れを察知して、アドレスをチェンジするから、従来の「物」対象の犯罪取締では手におえない訳である。
  また、ネット取引そのものがタックス・ヘブンとなる恐れありと、国際的合意を促し、「サイバー・タックス・ポリス」の創設必要性を指摘する向きもある。
  例えば、ネット経由で海外に売れば消費税は「輸出免税」、音楽配信など記録が残らないものをどうするのか、全く新しい発想からの対応が求められている。
  だがこんな国際的対応もさることながら、インターネット・オタクがパソコンの前に座りきりで、深夜ニタリと一人笑いしながら心底楽しみ、幸せ感に浸る図を想定すると不気味ではある。
インターネットセクハラなどの新手の犯罪が登場し、ドラック(麻薬)使用で廃人となると同様にネット・ヘブンが新たな廃人作りの「ネット・ドラック」と化さないかと危惧する昨今である。


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