AICON  NEWS

Vol.32 (2000.5)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕


ハード・ウェア産業 ⇒ ソフト・ウェア産業 ⇒ サード・ウェア産業

  世界の巨人企業で永遠の覇権確立者と目されていたIBMがパソコンでも先駆者だろうとの大方の見方が短期間で、もろくも崩れ去ってしまいました。
  記憶は定かではありませんが、もう15年くらい前だったでしょうか。マイアミのフォンテンブローに立ち寄った時、メインバンケットを借切り、壁側に300台のパソコンを並べて、別々のソフトを付け、若い粒ぞろいのハイレッグ嬢がエンゼンと微笑んでいたのを思いだします。
それまでの情報機器の大型コングロマリットがパソコンでも世界制覇するものと早合点したものでしたが、このとき既にIBMの凋落を促す筋書きが用意されつつあったのです。
「生き馬の目を抜く」はお江戸の生存競争を表す言葉でしたが「ハードをタダにする」世界情報産業の生き残り作戦が静かに潜行していたのです。
「物作りこそ価値作り」と額に汗することを美徳としてきた我が国では考え付かないような「物作りよりソフト作り」がパソコンの世界で主流を占めることとなりました。
  世界の巨人IBMは単なる「ハコ」メーカーとなり、それを動かす基本ソフトメーカーのマイクロソフトが情報産業の盟主の座につくことになりました。
  ここで「ハードウェア産業」から「ソフトウェア産業」へのシフトが起きたのです。
最近になって、ソフトウェア産業の問題点がクローズアップされることになりました。ビル・ゲイツが株式時価総額で世界の富豪ナンバーワンについたのは才覚の成果として当然というべきでしょう。
だが、それがなければパソコンが「タダのハコ」になるような「自家製品丸ごと、抱き合わせ売り」をアメリカ司法省が標的としました。また、インターネットの便利さの反面、ソフトの脆弱性による新たなトラブルの続出も新たな世界的問題を引き起こしました。
「メリッサ」や「ラブユウ」のようなハッカー、フッカーの暗躍、暗証解読による不正金融手段は世界規模の犯罪へと発展し、タックスヘブン、ネットヘブンと悪の温床化の危機を予見させるものとなっています。
  そこで、このような問題点を解決するためには「人間の知恵」により「ハードとソフトを融合した新たなサード・ウェアが必要」ということになったものといえるでしょう。
  それは情報を人類のために活用する社会システムの構築を目指すものです。
  既に、生産の効率化手法であるJITに代わり、作り過ぎのムダを省くSCMが導入され、新たなビジネスモデルとして注目されていますが、これもサード・ウェアと言えるでしょう。
  リナックスの目指すような情報活用の障害となる個人のソフト利権を抑制する経営倫理の確立もその一端でしょう。
  また混乱を起こすだけの情報システムの破壊分子の制裁を当然とし、そのような行動を抑止する社会の形成によってサード・ウェア産業が成立するものといえるでしょう。


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