AICON  NEWS

Vol.35 (2000.8)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕


商業調整 ⇒ 環境調整

  日本型規制の典型と世界的批判を浴びてきた「大店法」が「大規模小売店舗立地法」と衣替えしました。
資本の自由化が始まった時、国際的に「ノートリアス・ミティ」と批判を浴びていた通産省は小売業者の立場に立ち、枕とシーツを一緒に売る寝具店さえ認めませんでした。
そのバックグランドには、商店会を票田とする政党を超えた裏支援を無視できず、かといって湧き上がる国際批判にも応じなければならない苦しい立場がありました。
  このジレンマに解決の糸口を与えたのは、小売業者の圧力により市区町村の条令により300ページを超える新規出店をも規制する動きが多発し始めたことでした。
ここに、誇り高き通産官僚は地域毎の勝手な「商業調整協議会」の動きを封ずることとし、国として統一的対応を図る大店法を成立せしめたのです。
  中小小売事業者の事業機会の適正確保、消費者の利益保護という観点からの大義名分を振りかざして小売業のエゴを否認したのです。
だが、この裏にはグローバル化した国際商業資本の進出を防止し、大型小売業の競争を抑制する民族資本擁護の意図が残っていたことも否定できないでしょう。
だが、既存小売業支援の「空き店舗対策」も「動かない商店街」に阻まれ、ついに新たに誰も逆らうことのできない「環境基準」による規制へと方向を切り換えました。
  この間、経営基盤の強化を期待した大型小売業の百貨店、ビッグストアは放漫経営から大幅欠損、公的資金による救済にすがろうとする哀れな存在へと転落してしまいました。すでに、先進国の流通資本が資本市場を通じて、行き詰まったわが国の大型流業を安く併呑しようと手ぐすねを引いて待っています。
  このままでは、民族資本の保護を目論んだ誇り高き通産官僚の40年近くに及ぶ流通保護政策はなんだったのか、その徒労を味わされることは堪え難いことでしょう。
  ここに、視点を流通調整から環境調整に移した通産官僚の苦心が見て取れます。
流通によって、もたらされる交通渋滞、自動車の騒音、排ガスによる地域汚染、交通事故による人命の損傷、不法駐車・放置駐輪などの問題に加え、商業施設の吐き出す廃棄物処理への対応策がフンダンに盛り込まれました。
従来、国際的批判を浴びてきた流通政策を方向チェンジし、国際的にも批判を蒙ることの無い環境問題へとシフトすることにより通産官僚の枕も漸く高くなったことでしょう。


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