AICON  NEWS

Vol.37 (2000.10)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕


TQC(全社的品質管理) ⇒ E−クオリティ(電子的平等品質)

  高品質をうたい文句の日本製品への信頼が揺らぐような事件が相次いで、表面化している。国内では、スーパー店頭から撤去された廃棄用牛乳が夏の炎天下、屋外で混入され学校給食に供されていたという。
  走行事故多発の不良製品をリコールせず菓子折り持参で内密にと処置する専門組織があったという。国内のみならず、海外では日系企業が欠陥タイヤを放置した報いで供給先の自動車メーカーへの賠償に苦しむことになるという。
  どのケースでも悪い情報から遮断された社長が記者会見で「知りませんでした。申し訳ございません」と被害者でも、株主でもない新聞記者達に判で押したような平身低頭の平謝りを繰り返している。
  日本はSQC(統計的品質管理)をアメリカから教わり、小集団活動を加えて個人主義の欠点を克服し、チームワークによる品質向上を実現した。
さらに、これを生産現場から企業の全組織対象に拡大し、TQC(全社品質管理)へと発展させ、日本製品の高品質は世界的認証を受けた。
このTQCがアメリカで再編成され、TQM(全社的経営管理)として逆輸入され、日本商道の大原則であった「お客様は神様」もCS(顧客満足)とアメリカ流のお化粧をして逆流し、経営用語の王座に収まっている。
『黄色い思い上がり日本人への白人の反撃』と国粋主義的義憤を表明するヒトもいれば、「これが日本の実力、白人には勝てない」と肩を落とす人もいる。
  おりしも、ハヤリコトバの「E」をつけた「E−クオリティ」なる新語が輸入され、これこそ本物の品質と大モテで、TQMを凌ぐ勢いである。
  「顧客に製品・サービスを平等に届ける電子の質」という意味合いらしい。がんじがらめの品質管理に疲れ、技術過信が招く身内の事故隠蔽に汲々とするより、顧客に事実を明らかとし、同一の製品・サービスを提供するのが企業の責務という倫理性に貫かれた崇高な企業行動原理であるとされる。
  E−ビジネスにおける規制緩和の要求と新たな規制の介入を許容しようとする「レギュラトリー・スタンダード」(規制的標準)発想が採り入れられている。
  情報のオープン化のもとでプライバシー保護の規制を認め、サイバー(電脳)社会の破壊者ハッカーやフッカーの根絶を是とするものである。
  ネットワーク社会が情報のオープン化、高速化、双方向性を通じて不公正の介入を排除していけば、今まで人為的に操作、捏造、歪曲されていた経済情報を人間の不正の入り込めない聖域としてしまうことも予想される。
  そうなると、不正があった社会を懐かしむ、人間知の浅さが、また頭をもたげることになるのかとも類推する昨今である。


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