AICON  NEWS

Vol.39 (2000.12)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕


不飽和マーケット ⇒ 過飽和マーケット

 「一向に景気が良くなりません」と嘆く多くの中小企業とお付き合いして、もう、10年がたちました。
 この頃では、漸く「待っていても良くなりません」といい続けてきたことが理解されだしたような気がします。
 エコノミーがスーパーコンピュータを駆使して、「桜の花の咲くころ」とか「紅葉が映えるころ」なんて予告しますがどれも外れでガッカリがずーっと続いてきたのですから当然ともいえましょうか。
 「鹿を追う猟師、山を見ず」とか「紺屋の白袴」とがよく一言ったもので専門家だから当たらないともいえます。
 「こんな良い製品が、この値段で、なぜ売れない」と嘆く開発者、メーカー、セールスマン皆一様に「専門家のワナ」にはまっています。
 こんな専門家を前に「あまりにも当たり前ですが」と前置きして「消費者としてものを見ましょう」と訴えてきました。
 メーカーマンも流通マンも個人生活においては「この品質では」と疑問を持ち「まだ十分ある」と家庭内在庫を思い浮べ、「高いな」と判断すれば「もう少し安くなるまで待つか」と結局、買わないでしょう。
 経済学はこんな生活実感とはかけ離れたところで「人間の欲望は果てしなく増大する」との前提条件のもと、マル経、近経の論争を闘わせてきました。
 最近アメリカのサンタフェ研究所などがリードする「複雑系経済学」が多数の経済変革要因を取り上げていますが、今、一つの感があります。
 平成に入る前まで、私たちは成長を当たり前とし、欧米へのキャッチアップを目指して前年比を基準とする右肩上がり経済に酔ってきました。
 そこでは、公共投資、設備投資、個人消費という3つの機関車がフルに働きましたが、平成に入ってこれらが全部機能不全になって、今までの景気観が通用しなくなり「構造的変革」に遭遇したのです。
 「モノ充足」の過飽和状態に到達し、かつて経験したことのない「欲求の限界」を前提とする「過飽和」経済への対応を求められているのです。
 タンス一杯、腹一杯で買うものの無い消費者が今日の実態なのです。
 そこへ、グロバリズムということで安い海外製品が流入、量的には増加しても金額的には減少しています。
そんな中、わが国の景気指標は相いも変わらず「前年同月対比」を用いているのですから永遠に景気は良くならないでしょう。
 それでも、消費が伸びるチャンスに恵まれる業界もあります。最近のインターネットによる通信費の増加、買い替え需要で売れている車が好例です。
 好況、不況に替えて、「不飽和と過飽和」を用いる発想転換をお勧めします。


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