AICON  NEWS

Vol.37 (2000.10)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

力の流通革命 ⇒ 合理化の流通革命

 20世紀最後の「不毛の10年」とヤユされたわが国経済の不振の中で最も惨めだったのは「流通革命」の結末でしょう。
 50年代、わが国経済の復興とともに華々しく登場した「流通革命」は「流通コンサルタントの神様」や「流通企業の旗手」を多数、輩出しました。
 流通の先進国アメリカを視察して、わが国に「大型小売店舗によるセルフサービス、ワンストップサービス」の新業態をもたらしたのはその功績でした。
 セルフサービス、ロスリーダー、クルマを前提とする大量陳列、大量販売の大型小売業の出現は成長する消費力充足に不可欠の機能を発揮しました。
 だが、その実態はバイイング・パワーをバックとし、流通コスト無視の「価格破壊者」を自負する押し付けであり、「力による流通革命」でした。
 それでも、努力しない小売商店街、百貨店を抑え、消費者に受け入れられ、大店法に助けられ幸運な発展を遂げてきました。
 さらに、DIT、CVS、ドラッグの新業態も貧欲に関連事業として取り込み、大型店舗から小型店舗までマルチ業態展開によって、間違いなくわが国流通の覇者として君臨するものと思われてきました。
 ところが、こんなシナリオが怪しくなり、遂に破局目前の大型小売業続出で問題を21世紀に先送りしたというのがわが国「流通革命」の実態です。
 かつて、あれほどのしわ寄せをメーカーや中間流通に押し付け、証券市場から吸い上げた資金はどこに消えたのでしょう。
 いうまでも無く、管理部門を肥大化させ、マーケットサイズを無視したオーバーストアへの巨額資金投入がもたらした放漫経営による必然の結果です。
 1960年代資本の自由化外圧が強まったとき、あらゆる手段を講じて流通業の資本の自由化を食い止め、「ノートリアス・ミィティ(悪名高き通産省)」と非難された通産官僚は今、この現実を前に「あの努力はなんだったのか」と空しさを噛みしめていることでしょう。
 この結末は、アメリカやヨーロッパの流通合理化の最先端を行く、「合理的流通システム」の導入により、結論を見ることとなるでしょう。
 既にトイザラス、コストコス、カルフールと日本上陸が相次いでいます。
 Eコマースの分野でも「クリック・アンド・モルタル(オンライン店舗)」が虎視眈々と直接投資を進めています。
 そのうち、小売外資の直接進出が株価低迷の大型小売業の株式取得による支配へと舞台が回る機が熟しています。彼らの戦略は早めに手を出すより、いったん潰れてから買いに出るのが常套手段との分析も聞こえてきます。
 わが国の大型流通業の店頭にヘンポンと翻のがスター・アンド・ストライプや3色旗となる本物の「合理化の流通革命」が到来するのも、もう直ぐということになりそうです。


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