AICON  NEWS

Vol.42 (2001.3)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

ビジネス・コンサルティング ⇔ ビジネス・コーチング

 シドニー・オリンピックの金メダリスト高橋選手を育てた小池コーチの存在がクローズアップされ、にわかに「コーチング」が流行り言葉となった。
もともと、スポーツにコーチはつきものであったがアメリカで早くからビジネス界にも導入され、「ビジネス・コーチング」として普通名詞化していた。
 日本の鬼の特訓的「ガミガミ精神論」のハードさに対して、深層心理的アプローチで「できる自信」を持たせるソフトな精神論ともいえるスキルである。
 ビジネスコンテストに勝たせるためには社長以下平社員までコーチをつける必要があるとの認識が広まり、コーチング理論なる新分野も誕生している。
そして、診断士の試験にも「助言理論」の一端として登場することとなった。
 そこで、われわれの本来の仕事であるビジネス・コンサルティングとビジネス・コーチングはどう違うのか対比したのが次の図である。

(コンサルティングの立場)
「こうすべき論」
他律的発想の受動
外からのプッシュ(押しつけ)
助言、提言の与え
ベターの可能性(そこそこ)
説得、評価、誘導
否認、否定
上からの発言(階層意識)

(コーチングの立場)
「やれるはず論」
自立的発想による自創
内からのプル(引き出し)
潜在力の気づき
ベストの実行性(全能力発揮)
非説得、無評価、非誘導
共感、肯定
下からの発言(無階層意識)

コンサルティングにおいては経営に関する専門的立場から積極的に「こうすべきである」と提言し、診断企業の実行を支援している。
 これに対して、コーチングにおいては、診断企業に内在し、潜在している可能性を引き出し「やれるはず」という自信がでるように仕向けるものとする。
 これは一見、相反するようであるが本質的には車の両輸関係と同様である。いかに良い診断と自信を持っても、診断企業に理解され、実行されなくては徒労である。
 こんな事態を招かないためには、コーチングのスキルを活用し、診断企業が自ら気づいたものとして実行意欲を燃やすようにリードしなければならない。
 最近のネットワーク社会におけるエンド・ユーザー・コンピューティングの普及はエンパワーメント(個別権限委譲)を基本条件としている。
 社長から末端社員まで全てが潜在力を引き出し、ベストな選択を行なうことにより、エクセレント・カンパニーの地位を保持できるものと考えるべきである。


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