AICON  NEWS

Vol.45 (2001.06)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

無痛の責任転嫁⇒苦痛の構造改革

  小泉旋風に野党はなす術を知らず、そのうちボロをと期待した自民党古株の派閥領袖も下手に動くと自分の地位も危ういと静観を決め込んでいる。
 唯一、ボロを出してくれるかもしれないと期待する外務大臣発言も機密費で傷ついている外務官僚と族議員の意図的陰謀と指摘する向きもあってあまり強くも出せない。
 こんな中、いよいよ小泉主導の「財政政策諮問会議」が「聖域なき構造改革」を具体的に打ち出し始めた。
 道路特定財源であった揮発油税を一般財源化し、地方交付税を縮減する方向がまず手始めということになりそうである。
 第二次大戦の50年間、政界・官界による日本株式会社の経営は先進国へのキャッチアップまでのプロセスでは「奇跡的」機能を果たし、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と絶賛されもした。
 だが、85年に「1万ドルクラブ入り」を果たした時、運命の転機が訪れていた。
「ここまで飢える心配の無い国になったのだから、もう少し、経済大国としての行動を」との要請に対して「第二、第三の黒船」とか「外圧」と既得権擁護が公然と続けられた。
 先進国に伍するために必要な規制緩和や市場競争原理の導入を拒み、補助金や交付金頼みの産業分野を温存しようとしたのである。
 金融混乱を起こさないためとする金融護送船団、食糧防衛第一義と危機感をつのらせる農業保護、エネルギーの危機回避をスローガンとする、公益産業分野規制などがそれである。
 先進国として地球規模で責任ある行動をとるためには一度は脱皮して「痛みを分かつ」べきであったのに政治家も官僚もこれを先延ばしして、20世紀最後の「不毛の10年」を作り出し、それを今日まで「不景気から好景気へ」という表現で偽装してきた。
 公費の投入の見返りに政治資金を要求し、政策より札束で構築された族議員、派閥議員の群れ、省益を最優先し、その拡充を図るために族議員を巧妙に利用した官僚機構、この二つ「もたれあい」の破壊こそ、構造改革なのである。
 公共事業に期待を寄せるゼネコンやこれに依存して肥大化した地方自治体等が経験する「痛み」とは人員削減であり、規模の縮小である。
 政官界の庇護が無くとも運営できる体制構築であり、企業も地方自治体も合併・連携への「痛み」を避けられない。
 これを集約すれば、「無痛の責任転嫁」から「苦痛の構造改革」へといえる。
中小企業診断士制度も変わったが、なぜと官に責任転嫁するより、苦しいし、痛いけれども民間中小企業を自らの手で開発する方向を選択しなければ明日は無いのである。


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