AICON  NEWS

Vol.48 (2001.9)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

ネット・バブル⇒ネット・リッチ

 IT狂想曲もそろそろジ・エンドを迎えつつある。
「私の夢を買って、一攫千金を夢見たエンジェルにいささかの責任も感じ無い。なぜなら彼らは私と同じ夢をみたのだから」
 こんな不遜なウソブキを発するネットビジネスの旗手にビジネス・エシックス(経験倫理)を説くことの無駄を痛感し、やがて天罰が下ると予測した。
 あにはからんや、意外に早く、その予言が的中した。ナスダック、ジャスダック、オプティマに華々しいフットライトを浴びて登場したヤカラが一場の夢を見終えて、ネット・バブルが現実となりつつある。
 ビット・バレーの熱狂も所詮は夢の一幕だった。
 チャップリンの「1人を殺せば殺人罪、千人を殺せば元帥栄誉賞」という戦争による英雄排出のメカニズムが崩れた時、経済界の成功者渇望論が台頭した。
 その紹介者であり、扇動者となったのは、24時間、間断なく情報を流し続けることを責務と錯覚し、「情報公開」「報道の自由」「無冠の帝王」を自認するマスコミだった。
 彼らも、ネット・バブルの責任があると糾弾すべきであろう。
だが、世の中は分からないものである。ネット・バブルのはじける中、着実にそれを利用して経済界に新たな地歩を築いたオールド・インダストリーがある。
 たとえば、「鉄は国家なり」と国の基幹産業として経団連に君臨した鉄鋼企業は情報技術を取り込み、溶鉱炉の最適温度管理を実現し、危険を省みず高熱炉の温度を見定めていた「炉前夫」を不要のものとした。
 流通面についてみれば、かつて大手商社の花形部門「鉄鋼部」を通じていた取引を電子商取引たとえばe-スチールに置換し、中抜きによる流通合理化を実現した。
 よくよく見ればネットの寵児は既存の産業に踊らされ、オールドビジネスに貢献して、ネット・リッチの形成に寄与したのである。
「重厚長大から軽薄短小へ」と浮かれた時代が過ぎて、やはり、重厚長大の重みが継続的に現存することを示した。
 その意味ではマスコミもマンザラと免罪されるかもしれない。
 

以上


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