AICON  NEWS

Vol.52 (2002.1)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

地方の金山⇒都会の金山

 人類が地球上に生存を続けるためにはこれ以上の環境汚染を続けてはならないとの国際的合意が「アジェンダ21」に集約され、世界は環境調和型社会の時代に入った。
 そのためゼロエミッション(廃棄物ゼロ)の資源循環型経済体制の構築が急がれ、わが国では「循環型社会形成推進基本法」のもとに7つの法体系が組まれている。この政策の基本課題は「3R」なる用語に集約されていることは今や常識である。
 第1のRは廃棄物削減(リデュース)技術を開発することによって廃棄物排出を当然とした従来の生産・流通システムを廃棄物ゼロに近づけようとするものである。
 第2のRは廃棄物を再利用(リュース)することにより、廃棄物をゼロとし資源循環を実現しようとするものである。
 第3のRは廃棄物の再生(リサイクル)であり、形状・色彩・物性等を案えて廃棄物を無害化し、新たな資源として再活用して廃棄物ゼロを目指そうとするものである。
 これらは技術的にきわめて困難な課題と目されていたが、最近の技術開発はこれをクリアし、新たなエコ・ビジネスマーケット(環境改善産業)を生み出しつつある。
 こんな中、金の採掘精錬に大きな変革が押し寄せ、従来、地方の山間部から採掘されていた金が最近は都市鉱山から発掘されているというウソのような話がまかり通っている。それにしても東京、大阪に金山ができたという話は聞かないが真相は何か探求してみた。結論は簡単である。
 一般的に金鉱開発は鉱石1トンから5グラム以上の金があれば商業性を持つとされる。
 ところが大都市で廃棄されるIT機器の廃棄物にはこの数倍から数十倍の金が含有されているというものである。その典型例として携帯電話は1トン100グラムの金を含むという。
 携帯電話にアイモード、マルチ機能と次から次ヘオジンでは使いこなせない機能を多数付加して新機種への買い替えを勧め、旧型の廃棄携帯電話が急増した。
 PHS企業の過当競争が電話機をタダで手に入れ、通話料の請求がくれば東京湾にドボンのユーザーを増加させ、小額だけに回収コストも掛けられず泣き寝入りとの噂も。
 かくして捨てられる運命にあるケイタイが環境問題から価値ある金山に生まれ変わっているというのが真相である。
 公害を撒き散らすお荷物だった産業廃棄物が有用な資源として脚光を浴び、血眼になって回収合戦を繰リ広げる日も時間の問題か。
 そういえば、古い記憶だが筆者の勤務していた鉱山で昔精錬した後、捨てていた堆積場の鉱滓(コウサイ)の金属含有量(品位)が新たに採掘する鉱石より高いと再び掘り返して精錬していたことを思い出した。
 そのうち、「廃棄物成金」「ゴミ成金」が出てくるかも。


これより先は会員専用となっております。

戻る