AICON  NEWS

Vol.53 (2002.2)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

技術貿易収支赤字⇒技術貿易黒字

 「不景気」「リストラ」「倒産」「テロ」「狂年病」と暗い話題に明け暮れたミレニアム第一年でしたが、今年はそうありたくないもの。
 そこで持ち前の楽観論と性善説でわが国の強さを再検証してみることにしました。<アルンデすよ>わが国の強さを示す要因が。感激しましたね!
 実は93年ころから技術貿易収支は黒字に転じていましたが、このことは専門家以外あまり理解されていませんでした。
 受け取る方の技術輸出金額は2001年度、日本円にして1兆円を突破し、しかも前年比10%も増加したのです。
 なにもかも前年ワレというご時世に嬉しいことではゴザンせんか。しかも支払う方の技術輸入金額はナント前年比8%増加、この結果、わが国の特許、ノウハウは600億円も稼いたのです。
 しかもですよ、今世界の最先端技術で騒がれているヒトゲノム(人間の全遺伝情報)解析装置はあの大赤字に苦しむ日立が開発したもので、当時、日本の製造業がアメリカを席巻しマアこのくらいなら黙って使わせようと遠慮したんだことに端を発するそうです。
 日本人の奥ゆかしさですね。もし、日立がこれを使う企業からガメツク技術使用料を徴収していたら世界ナンバーワン企業になっていたかも知れません。そうなると、わが国の技術収支は今の何倍にも達していることでしよう。
 このお陰で2000年アメリカのセラーノ・ジェノミックスが世界一番乗りで解読を終わり、6月に、クリントン大統領が得意満面でそれを祝ったのです。
 そうそう、わが国の奥ゆかしさを伝える材料がもう一つありました。
 東大教授の坂村健氏の開発したTORON(ザ・リアルタイム・オペレーテイングシステム・ヌクレウス)で、今や多数の家電、自動車などに搭載されている小型コンピューターのOS(基本ソフト)なんです。
 今はやりの「ユビキタス(どこにもあるコンピューター)」発想に基づきこれを誰でも利用できるようにオープンソース(開放言語)としたという。
 ビルさんのようにパテント漬けにしていたら、坂村氏こそ間違いなく、彼をしのぐ世界一の大金持ちになっていたかも?
かくして、わが国には技術貿易で稼げる素質があるのです。
ただ、そんなにしてまで稼がない、奥ゆかしさ、これが日本人の行動なのです。


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