AICON  NEWS

Vol.54 (2002.3)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

製造業の空洞化⇒製造業の現地化

 日本の製造業が空洞化するとの製造業消滅論が横行し、今にもわが国経済が沈没するかのごとき愚論が闊歩している。
中でも最近は中国の工業生産力が急上昇し、わが国製造業はお先真っ暗との報道が誠シヤカに論じられ、これを否定するものは日本衰亡の加担者との極論にまで発展している。
 ここまでエスカレートすると「空洞化」とは何ぞやということを明確にすべきであろう。これが明確に定義されないまま、空洞化イコールわが国産業の衰亡という固定観念が定着してしまった気がする。
 私の記憶を逃れば、第2次大戦後、肺結核がわが国の死亡率のトップを占めていた時代に肺に穴が生き、呼吸機能が低下して死に至るということだったような気がする。
 その伝からすればわが国製造業が中国に取って代られ、衰亡の一途を辿る大問題という筋書きになる。
 確かに中国経済の開放による旺盛な生産力は目を見張るものがある。だが、「世界の工場中国」の言葉に象徴されるようにわが国のみならずアメリカ、ヨーロッパの企業も中国の安い労働力による製品の調達を恒常化している。
 わが国企業も中国の生産力を活用しなければ国際競争で劣後に陥るのであり、この行動をして非国民と非難することは当を得ない。
 むしろ、中国の経済成長はわが国の飽和マーケットの中で前年割れに苦しむ企業にとって救世主ともいえるのである。
 なぜならば、今や中国市場こそ年率2桁の驚異の成長を遂げている市場なのである。10億の民が生活必需品の供給を渇望し、わが国で衰微し、失われつつあるマーケットが今から成長するのである。
 減少し消滅する国内マーケットで前年割れに苦しみ、貸し渋りに呻吟する楽しくない経営から脱し、このマーケットに活路を見いだすのが「したたかな企業経営行動」といえよう。ただし、このマーケットを掴むためには国内に安住してひと時の出稼ぎで済ませようとする安易な姿勢では長続きしないでしょう。
 現地を愛し、現地に尽くし、現地に骨を埋めるくらいの気力を持つことを勧めます。
かくして企業経営者に「空洞化」を「現地化」と読みかえる発想転換を促すのです。


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