AICON  NEWS

Vol.55 (2002.4)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

「もの作り工場」⇒「知恵作り工場」

 最近、わが国産業から製造業のウェイトが低下し、やがて日本経済が空洞化し、壊滅するかのごとき懸念がマスコミの話題となっている。
 特に、隣国中国がWTO加盟を果たし、「世界の工場」としてわが国の論出市場を侵し、また、デフレ発振地となっていると、やたら中国警戒論が闊歩し始めている。
 だが、南北間題を持ち出すまでも無く、世界のハーモナイズ(調和)ある経済発展のためには発展途上国の経済発展を促すことが不可欠であることは論を待たない。
 中国の成長は、かつてわが国が歩いた低賃金による対米輸出の軌跡と同じであり、それを懸念し、脅威と受け止め、できれば阻止しようと試みるような発想は国粋主義的エゴイズムとして世界の嘲笑を買うこととなるであろう。
 皮肉なことに、円安に振れているのに物価の下落をもたらしているのは、中国の人達が額に汗して、奉仕的コストでわが国に製品を提供してくれているからである。
 脅威論どころか感謝を表すべきであるにも拘らず、セフティ・ガード権を発動し、ネギ、椎茸、イグサ等の輸入を抑制する愚を侵し、報復関税のシッペ返しを喰った。
 もはや、大量生産ラインに乗る製品についてわが国が中国の低人件費と争うことは第二次世界大戦の原爆と竹槍論と同じ不毛の抵抗というべきであろう。
 わが国が志すべきは中国生産の前工程とも言うべきデザイン、企画、設計であり、テストプラント建設であり、さらにその後工程である流通、アフターサービス、メンテナンスサービスのプロトタイプ(標準形)を提供することである。
 もの作りの工場は中国にシフトしても、わが国は頭を使い「知恵を作る工場」の機能を果たすべきである。
 マザーファクトリー(母なる工場)、プランニングファクトリー(企画工場)により、中国のみならず、全世界の量産プロトタイプシステム構築の主役としての役割を担うことに誇りと喜びを見出し、空洞化なるアイマイな発想を駆逐しなければならない。
 そんな試みが元気な中小企業に登場している。容易に知恵が出せるような雰囲気を作るためプールやアスレチック設備、じゅうたんを敷き詰め、癒しサウンドを流し、アロマセラピーの瞑想ルーム等を設け、気の向いたときに仕事に打ち込めるフレックスタイム導入で研究開発の成果を上げているという事例もある。
 こうした雰囲気で開発された製品の量産ラインを中国に輸出し、広大な国土に住む13億の人達に、これを提供して感謝され、デザイン料、設計料、システム料を対価として手にするエクセレントな活き方が今から実現するのである、。
 わが国おいてにはマーケットが減衰し、過当競争にあえぎ、リストラに苦しんでいる業界であっても中国では渇望される今からの成長マーケットであるケースが少なくない。
 中国に進出し、知恵を使ってもう一度チャンスを得ましょうと訴えたい。
 これこそ本物の交際貢献である。


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