AICON  NEWS

Vol.56 (2002.5)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

貿易立国⇒投資立国

 財政赤字、株価低迷、失業率上昇、国会議員汚職、外務省汚職、BSE(牛海綿脳症)、食品品質欺瞞と並べ立てれば「日本消滅前夜」ともいうべき悲観諭一色のマスコミ報道に、気の弱い向きならずとも危機感を覚えるのは当然というべきか。
 これで「お先真っ暗、老後のため、タンス預金」とくれば、所得が増えても消費に図らず、その上、中国を始めとするアジア各国から安い繊維二次製品、白物家電が流入して物価が下がるのだから、永遠に前年同月比が上向く可能性は無いのです。
 ついこの間まで、好ましいとされた「デフレ」が悪いと敬遠され、経済を蝕み、疲弊にに陥れる元凶とされた「インフレ」への期待諭、礼賛論がまかり通っています。
 昨日の常識が今日は非常識となりかねない昨今ではあるが、政治家、官僚全員が金に走るのでもなく、「狂牛病だからって、やはり焼肉は美味しい」と食う人もいる。
 どうも、表面的な悲観論が日本人のお好みらしい。こんな風潮に水をさす事を使命と心得て、あえて今回は明るい楽しい話題を一つ。
 昨年(2001年)の財務省統計に注目してみたい。
 貿易からの稼ぎは相変わらず黒字であるものの3年間連続して減少し、8兆5千億円、これに対して海外投資から得た稼ぎはナント8兆8千億円に達したのです。
 海外投資の稼ぎが貿易の稼ぎを上回ったオメデタイ年だったのです。
 その内訳を見ると外国の債券、証券への投資で得た利子が6兆6千億円、企業の海外投資の配当が1兆5千億円だそうです。しかも、これはわが国に進出している外資系企業がわが国で稼ぐ収益を差し引いた後の計算なのです。
 日本の海外投資は失敗と報道され、国際金融を手掛けた都市銀行の海外拠点整理、情報通信分野が意気込んだ海外M&Aの巨額損失というマイナスにもかかわらずです。
 無資源国のわが国は貿易で稼ぐ以外、手が無いとされ「貿易立国」を掲げて、ひた走った常識は、もう、過去のものなのです。
 1400兆円とされるわが国の貯蓄が立派に海外から所得を上げてきているのです。国粋主義のヤカラがいう「日本から借金して活きるアメリカ」もあながちウソばかりとはいえません。
 わが国のバブルがハジケて海外のハゲタカ・ファンドがお買い得の行き詰まり企業を買収していると懸念する声もありますが、この実績を見れば、そう心配することではありません。
 わが国はGセブンなどで世界不況の発振地とならないようにとクレームをつけられ、世界の問題児と冷たい目で見られていると報道されています。
 だが、実態は司法輸出国ジャパンの投資が減少するようであってはならないとする他の先進国の本音がカムフラージュされたものと見るべきでしよう。
 かくして、わが国は「貿易立国」から「投資立国」へと脱皮してきたのです。


これより先は会員専用となっております。

戻る