AICON  NEWS

Vol.58 (2002.7)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

石油プラスチック⇒農作物プラスチック

  「人類の材料開発史において最大のマーケットを獲得したものは」とクイズまがいの問を発すれば、多分、プラスチックと言うことになるだろう。
 材料史を概括すれば石器時代の石・土から鉄器時代の金属へ、さらに石油から抽出するプラスチック時代を経て、現在は複合材料時代に入っている。
加工が簡単、極限状態に耐え、低コストで大量生産できるることから材料ののトップスターとなったプラスチックであるが宿命的とも言うべき問題特性を秘めていた。
 地下資源の石油状態でも、抽出されてプラスチックとなっても決して地球に溶け込めない孤児的資源であり、それ故に地球環境破壊の元凶と断罪される悲しい運命の連続だった。
 原油の時はタンカー事故で流出して海の生態系を破壊すると糾弾され、精製されて新材料誕生と絶賛を浴びながら、やがて生物の内分泌を犯す環境ホルモンと罵声を浴びせられる。
 極めつけは自然に還元されることの無い孤独物質として、地球の自浄作用を妨害する環境破壊者の汚名を着せられ、脱石油の合言葉が地球を覆うこととなる。
 このように不運な石油プラスチックに代わって、次の主役に踊り出たのが農作物プラスチックである。
 田で育つ稲、畑で栽培した芋、トウモロコシを原料として植物性プラスチックを作り、利用後廃棄しても植物だから土中に帰り、分解されて環境を汚染することがない。
 既に世界のトップ自動車メーカーは内装材に利用し、家電メーカーは自物家電に、住宅産業は建築材料としての用途開発を着々として進めているという。
 農作物の澱粉からプラスチックを合成し、稲の藁を微生物醗酵処理してエタノールを抽出する等の化学的新技術に加え、遺伝子操作でプラスチックを作る植物を開発する試みが注目されている。
 大雪の山道でガス欠、大ハリケーンでクルマに一週間閉じ込められてもその内装材を食べて健康そのものというニュースが世界に飛び交うのも、そう先のことではなさそうだ。
 今日の世界経済の繁栄をもたらしたエネルギーの最大供給者である石油とその親族であるプラスチックが厄介者扱いされるのは、自然と相和さない孤立特性によるものである。
 ひるがえって、この複雑な構造的変革期にあるべき企業経営の方向を示すべき中小企業診断士が「一匹狼」として孤高を保つ姿勢を捨て、知的連携を図ることの意義を認識すべきであると連想してみた。
 「先生」と呼ばれ、狭い個人的活動に止まる姿勢から脱却し、企業と一体感でビジネスプランを策定し、その共感を得られる幅広い知的連携が農作物プラスチックのように多用される時代がきているからであり、組合はその役割りを果たす場とならなければならない。


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