AICON  NEWS

Vol.59 (2002.8)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

ニューエコノミーアメリカ⇒ニューエコロジー日本

 世界経済の牽引車と誇り高きアメリカがおかしくなりつつある。テロリズムは忌むべきであるが、アメリカの理論こそ世界の良識と強引にベトナム、湾岸、アフガニスタンに侵略してきたことがいつまでも容認されると考えるのは早計である。グローバルスタンダードとはアメリカンスタンダードとの強者の押し付けに我慢した世界経済もシビレを切らして、ニューエコノミーに疑問符を打ちドル離れを起こした。
 きっかけはエンロン、ワールドコムの粉飾であるが、90年代後半の異常株価上昇を「根拠なき暴騰」と警鐘を発したグリーンスパンの指摘の頃から潜在していた。
 頼りにならないが代わりがないという理由で買われてきたドルはどこかの国の総理のポジションとダブる。
 日本に繊維から家電、遂に国家の栄光のシンボルであった自動車までやられたアメリカが再生を図り、成功した奇跡にはなるべくしてなったバックグランドがあった。
 経済の支配者白人が満たされた飽和経済の中に浸かる一方で、貧困に苦しむマイノリティ、カラードがあった。
 時の大統領レーガンはこの解決の方程式にマイノリティーを取り込むことを目論んだ。アファマティブアクトによりマイノリティに大学教育の機会を与え、これを国内消費の主役としようと企んだのである。
 この政策はズバリ大当たりとなり、下半身の大統領クリントンの時になって実を結びアメリカ経済の再生をもたらした。
 大学教育を受けたマイノリティがあらゆる産業分野に進出し、勤勉さを発揮してアメリカンドリームのチャンピオンとなり、増加した所得を消費に投入して内需の拡大の原動力となったのである。言葉を変えれば低貧層に所得を与え、所得の平等化が実現したことによりアメリカ経済が活気を取り戻したのである。
 消費が伸びれば設備投資が起こり、ベンチャー企業が株式を公開して、資本市場から直接金融を実現し、ストックオプションにより株式への傾斜を高める。
 わが国の郵貯が非難され、アメリカの株式投資が高い礼賛を浴び、日本もアメリカを見習うべきとの指摘が相次いだ。
 このストリーを見ていると世界経済の劣等生とされたわが国の過去に妙に似ている。所得を平等化した結果、内需を新規誘発すべき経済層を欠いたことで行き詰まった。
 全国民が株主を目指して、1年間全国民が稼いだGDPの2倍の株価総額を生んだ。さらに、地価まで年間GDPの2倍まで膨らみ、やがてバブルを迎え、10年間に丁度3分の1くらいまで落ちるべくして落ちた。そして今はゼロエミッションと福祉のマーケットを目指す新創業が盛んであり、京都議定書を批准して「エコロジー国家日本」への道を加速しつつある。
 アメリカは今からわが国の過去の道を歩むことになるだろう。
アメリカを見習うべしとされるがそれは見当違い、日本こそアメリカに先駆けて所得の平化等化による飽和経済を実現し、今デフレに喘いでいるが餓死者はいない。アメリカ株価の低迷、マイノリティの所得増による消費の飽和化が今からアメリカを襲う。良く見ればアメリカは日本の後塵を拝しているとも言えるのである。
したがって、ジャパンアズナンバーワンから転げ落ちた日本はアメリカを模範として再生すべきであるとする多くのエコノミストの指摘は見当外れである。


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