AICON  NEWS

Vol.60 (2002.9)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

水贅沢国⇒水輸入国

「今年は何の年?」と聞かれたら「ブラジル環境サミット後10年、節目の年」と指摘する。
 この年を以て、世界の経済観が180度の転換をした重大な年だからだ。それまで公害問題といわれると費用の掛かる厄介な問題と多くの企業は回避していた。マスプロとマスセールの運動で「消費は美徳」と元禄ムード横溢の中、突如として「作り過ぎのムダ」が指摘され、それに反論する余地の無い論理的根拠が突きつけられた。
 人間が永遠に住める地球とするためには、現在を生きる人間が消費を抑制し、これ以上地球にゴミの山を作ってはならないとするご宣託である。
 それから10年、ヨハネスブルグで開催された環境サミットは国毎の不満はあるものの「ゼロエミッションによる循環型社会」の実現を世界共通の不変の規範として承認した。
 わが国は無資源国で世界各国から大量の資源を輸入し、加工して輸出しているのだから、環境問題において先進国のトップレベルにあると評価されるのは当然である。省エネ、省資源を実現しなければ国際競争に遅れを取るからである。そんな中、無資源国日本で唯一資源とされる水資源について驚くべき指摘がなされている。
 「安全と水はタダ」と島国の特異性を指摘されるわが国であるが、実は国内で使う水量よりも20%近く多くの水を輸入しているというのである。
 「わが国の組み立て加工型産業は水の力によって国際競争力を維持してきたといえる。
 「鋼鉄1トン当たり生産するのに水100トンが使われ、自動車1台生産するのに120トンの水が使われるという。半導体産業も水なくしては操業できない。
 これを可能にしたのがわが国の水力発電と工業用水であるが、それ以上の水を国外から輸入しているというのだから、どうも信じられない気がする。
 答えは簡単であり、わが国に輸入されている食料の生産に要する水量を計算したものである。
例えば小麦1トンを作るのに3,200の水が必要であり、牛肉1トンともなると実に10万トンと桁はずれの大量の水が必要だというのである。
 食料の大部分は水であることは理解できるが、その栽培、生育に要する水がこんなに大量であるとは驚きである。
 専門家の試算によれば、日本の年間降水量2,OOO億トンのうち利用しているのは半分以下の880億トン、そんな国が食料輸入によってアメリカから600億トン、オーストラリアから260億トンの水を輸入し、国内利用水量とほぼ肩を並べているという。
 「水に金を払うとは」と輸入ミネラルウォーターを批判する御仁はアメリカンビーフ、オージービーフを食うことを止めなければならない。
 人口増と環境異変により21世紀は水不足が地球の大間題となるという観測もある。その時、わが国は資源国として評価され、水不足の国から移民を受け入れるよう求められ場面も想定しなければならない。


これより先は会員専用となっております。

戻る