AICON  NEWS

Vol.61 (2002.10)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

失われた10年⇒最先端に達した10年

 20世紀の最後の10年間は日本が世界に醜態を属した10年であり、その痛手は21世紀に入っても引きづられてると「失意の日本」を指摘するエコノミストが多い。
 かつて世界経済の模範生とされ、ジャパンイズナンバーワンと賞賛された栄光は過去の夢であり、本当にお先真っ暗なのだろうか。
 わが国の現実を見れば、誰も飢えていないし、凍死もしていない。
高齢着の介護も完全とはいえないが新規業者の開業でやや過剰気味との指摘も聞かれる。
 確かに株価は低落の一途を迫り、地価も下げ止まり傾向に入った地域は未だ少ない。
リストラで所得が目減りし、マイホームは値下がりして、住宅ローンの支払いに追われ、老後に期待していた年金は底をつくこと間違いなしと報ぜられる。
 先行きへの不安が消費を抑制し、豊かな中での貧困観がわが国を覆っている。
唯一、それとマッチしないチグハグは銀座や心斎橋通りの高級海外ブランド店の盛況であり、それは豊かさを味わいたいとする楽観論者あ選択肢によってもたらされる。
 だが、国民の8割が「カネはあるものの買うものが無い」とウソブク国はわが国以外のどこにあるか?わが国は世界所得の平等化を実現した最先端先進国なのである。
 カラーテレビや低燃費・低公害車でアメリカ経済に食い込んだ日本を凌駕し、ヤンキーの首位を維持するためにドナルド・レーガンが膝を打った一つの手があった。
 マイノリティを教育し、所得を与え、その圧盛な消費力をアメリカ経済再生への切札とした。国家財政赤字下にも拘らず大幅減税を断行して後に幸運なクリントン時代の好況の基礎を築いた。アメリカは日米の所得政策を真似た俳優の大統領によって救われた。
 次に情報化社会への移行が遅れ、情報格差は10年の遅れと指摘される。確かに、パソコンのハード、ソフトは主としてアメリカの主導により世界に普及した。
 だが、情報処理技術が進んでも、それを使う人間の判断が伴わなければ不毛である。アメリカ経済の寵児であったエネルギーのエンロン、情報・通信のワールドコムの破綻は情報懐柔による一部悪徳経営者の詐欺の結果であった。
 わが国も食品関連企業の不祥事でオアイコとの見方もあるがそれは誤解である。
 貿易赤字を垂れ流しながらM&Aで株価を吊り上げたニューヨーク市場、ナスダックの相次ぐ低落はわが国のバブルの後追いする兆しといえる。
 ここに発生した彼我の差は情報の平等化を活用して先行き消費を抑制し、株価、地価を始めに徐々に、物価下落に導いたわが国民の英知のもたらしたものである。
 国民が情報を活用して高物価にノーを宣言し、デフレ経済の経験国となったのである。言い換えればわが国は世界先進国が夫だ到達していない最初の経済課題「過飽和経済」と「デフレ経済」を経験した唯一の先進国なのである。
 世界の基軸通貨を持つと自負するアメリカはわが国の後追いで今からこれを経験する。このように見れば、失われた10年は最先端に遠した10年といえるのである。


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