AICON  NEWS

Vol.63 (2002.12)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

新税制創設⇒担税力創出

 経済の低迷が税収の減少をもたらし、財政の危機が一段と高まりつつある。
 国家の提供する行政サービスにより安全で快適なサービスを受けている国民として納税の義務を拒否し拒絶するのは例外であり、多くの善良な国民は納税義務を容認している。
 ところがどこがら税を取るかという段になると、あいも変わらず政府税調と自民党税調の確執となり、「とりやすいところから取る」という低次元の税制論議になってシラケル。
 ドイツのライン川くだりを楽しむと観光案内の鉱声器はローレライを紹介するが注意しなければ見過ごすような何の変哲のない岩である。それよりも妙に目立つものが川のふちにある。これが昔の関所ならぬ徴税所の跡と教えられた。
ここからプロシア税制の悪知恵を耳学問することとなる。
 取れるところから取る税制のひとつが川の狭いところに設けた通行税の徴収所である。それから教会税、ヒゲ税、結婚税、葬儀税と続々、新税が作られていったという。
 「人動けば税に当たる」でよくもまあこんなに思いついたものだと感心する。
現在、世界の間接税の主流となっている消費税(付加価値税)はこのプロシアの知恵の流れを汲み1968年フランスで始まった新税であるとのこと。
 ひるがえって、わが国を見る。高齢者の介護保険は保険という名の新税であり、最近は地方自治体に外形標準課税を萎縮するというような新税創出が話題となっている。
さらに罰金にも新課税の変形とも言うべきものが多く登場しつつある。
ディーゼルエンジンの微粒子排出や歩行喫煙に課せられる罰金も税金の変形である。
そのうち、シンガポール並みにタンツバ(痰唾)を路上で吐けば痰唾税ということになるかもしれないし、既にある税の増税も取り沙汰されている。
 喫煙場所を求めて肩身の狭い思いをしながら高い税金を煙に払っている善良な喫煙者、ビールの酒税が高いのでやむを得ず発泡酒を求めている慎ましやかな庶民も増税の痛ましい標的となりつつある。
 かつての税制原則「公平、中立、簡素」に換えて、新たな税制原則は「公正、活力、簡素」であるべきというスローガンは聞こえたものの実態は旧態依然としている。
 だが良く考えてみれば、国民経済を活性化さ世るのは税制ではない。
ましてや、中立とは「当面の減税を将来の増税でカバーする先送り」である限り、活力となり得るはずがない。
 新創業、新分野展開に研究開発費の投入は当然であり、それをマーケットに導くためには流通開発費が必要となる。
 税制の中立を活力に置き換えるためにはこうした旺盛な企業の開発費を開発所要期間に対応じて免税とする政策展開が必要である。
 かくして、新税を創設する節に将来の租税負担力を持つ企業の育成が先であることを税の制の専門家を自認する関係者に知らしめなければならない。


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