AICON  NEWS

Vol.64 (2003.1)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

モノ不況⇒サービス不況

 今年の各地区、業界の新年会に招かれて様変わりを実感したのは「もう少しの辛抱で景気回復」と期待する挨拶が全く聞かれなくなったことである。
 狼少年の古い語りを持ち出すまでも無く、「もう少し待てば景気回復」の期待が12年間も裏切られたのだから当然と言うべきか。
 代わって、日本の没落、先端技術力劣化、産業の空洞化、年金破綻と世界経済の劣等生意識を深刻化させるような悲観論が多く聞かれた。
 エコノミストが「日銀短観」を錦の御旗とし、地価・株価の下げ止まりが期待されないと深刻な顔をするとマスコミが「テイヘンダ、テイヘンダ」と長屋の八さん、久間さんレベルの発言で煽る。
 しかしながら、平成にハイって10年以上、エコノミストの予言はすべて当らなかったのだから、この辺で辞表を書いて引っ込んでもらいたいし、良識ある報道機関ならばそんなに当らないエコノミストを出入り禁止にすべきである。
 かくも日本が悪評を買うのは「前年同月対比」の評価基準を脱し切れないエコノミストの流す悲観論を真に受けた善良な国民がやる気を無くしたからである。
 実は前年同月対比はモノの金額で、日本の実態の一面だけを見た結論だから当らない。
 成熟経済とは国民がモノの豊かさを享受し「もう買う必要のない」幸福状態である。
 だが残念なことに成熟に達したのに「まだ売れる」と供給過剰状態に陥ったことを見誤ったエコノミストはこれを「景気のせい」と転嫁してしまった。
 政府が内需拡大を叫んでも、国民から見れば「これ以上食えないし、これ以上着れない」のであり、これが普通の状態つまり「普況」なのである。
 この間、貿易で黒字を出しつづけた日本の金融資産は世界各国かに直接投資され、その金利と配当で平成に入り1200兆円から1500兆円程度まで増え、日本は世界一の金持ち国だということが理解されていない。  こんな金を持ちながら、未だ先進国のお荷物との批判に甘んじることはごめんだ。
 エコノミック・アニマル、ワーカーホリックと嘲笑する輩に一泡吹かせるには、広い意味でのサービスを楽しみ日常生活を文化や芸術で潤いのあるものとすることである。
 TVとパソコンの前を離れ、森林浴を楽しみ、絵筆を走らせ、短歌にいそしみ、コンサートに足を運び、さつきを慈しみ育てる生活があるはずだ。
 選択肢は無限、静かに心から安らげ、そこに没入できるものを求めて、そんなに金もかからず、ゆとりのさすらいを経験する新しい生き方を楽しむのだ。
 こんな生き方で「モノ不況」を「サービス普況」に変えれば日本は本物の先進国だ。
そういえばヨーロッパの王侯貴族は世界の植民地から収奪して、そうした生活を楽しんだ。
 日本は今、世界に投資し、正当な所得を得て、いよいよこれから文化や芸術を楽しめる優雅な最先端先進国に初めて到達した国といえるであろう。


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