AICON  NEWS

Vol.65 (2003.2)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

新創業・新事業分野展開⇒中小企業再生

 経営コンサルティングとは、継続的に旧知をチャージ(充電)し、自分流にアレンジして新知として中小企業にディスチャージ(放出)し、その持続を支援すると唱えてきた。
そのためには不断の観察力と将来に対する予見力が不可欠となる。
毎日、毎年、有効なコンサルテーション技術の書き換えに没入し、心からなる提言で中小企業の持続を果たし終えた時の喜びは何にも変えがたい。
しかも、一度成功しても、充足感を味わうのはつかの間、次なる変革に対応するため、休む間無く新構想を巡らせなくてはならない。
因果な仕事と解するか、仕事冥利と理解するかは、各人の人生観である。そんな状況下、今年の課題は昨年までの新創業・新事業分野展開から中小企業再生へとキーワードが変革する年と見ている。
 わが国経済の不振要因は3K(過剰設備、過剰債務、過剰雇用)にあるとし、この解決のため新たな産業政策が提起され続けてきた。 その一端として民間企業がその主体性を発揮して「選択と集中」により生産性の高い分野に経営資源を重点的に投下することを支援する政策体系が組まれた。
 これは大きくは2本の柱からなり、その一つが「新創業・新事業分野展開支援」であり、もう一つは「産業活力再生特別措置法」を中心とする「事業再構築」「事業再生」である。
 企業が合併や分社化を進め、経営資源を円滑に再配置して新製品開発や組織改革によって活力を回復するよう支援することとしたのである。
 しかしながら、中小企業政策においては最初にベンチャー支援センターが設けられ、その後やや遅れて企業再生は今年の課題となるものと位置付けられている状況である。
 このような経過となったバックグランドにはわが国経済の根幹をなしてきた金融機関がバブルの崩壊を受け、地価と株価の暴落により、不動産業、建設業、流通業に不良債権を発生させ、その解消が急務とされるに至ったという事情がある。
 本来、立法の趣旨は中小企業再生にあるものと目されていた「民事再生法」は一部建設業に活用されたものの、百貨店の「そごう」に見られるように大企業の再生を印象づけた。
 さらに、再生の前提となる、債務免除や利子負担軽減、再生ファンドの活用など企業再生とは大企業のための政策と見受けられるものが多く認められる。民事再生法を申し立て、実質倒産してから摘要されるDIPファイナンス(事業再生支援貸付)など漸く、政府系中小企業金融機関に認められ始めたところであり、今からである。
 ただし、この前提条件には元気な事業部門が存在しながら、投機的土地取得・株式投資などで過剰債務となり、資金繰りが回らない中小企業のみに認められるものという制約がある。そのためには、遊休資産・不良資産の売却後に残存する過剰債務の償還が最長でも10年以内に可能と見込まれる元気な事業部門を持っているのかが判断のカギとなる。
 この判断は過去の財務分析のみに徹してきた中小企業診断士のビジネスチャンスとはならない。今からどうできる可能性があるのかを私情に流されず客観的・合理的・科学的に分析して中小企業の潜在力を計数化し、将来予見できる中小企業診断士のみが担うことができる。
 このため、中小企業診断士の資質向上の新たな要請が高まっていると指摘している。本年の補正予算で20以上の都道府県にその窓口となる「地域中小企業再生協議会」が設けられ、4月から新予算で全都道府県スタートする予定である。
 腕を磨き、活かすべき中小企業を活かす中小企業診断士の輩出を望むものである。


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