AICON  NEWS

Vol.66 (2003.3)

 

今月の発想転換用語

理事長 新井 信裕

モノ作り業⇒モノ作り的サービス業

 わが国の経済発展を辿れば、奇跡的に幸運な選択の歴史だったといえる。
アメリカは軍事産業に傾斜し宇宙航空産業の覇権を握った。
ドイツは原子力産業を選び、原子力発電によりエネルギー供給に寄与した。
 わが国は良質な労働の供給を活かして加工組立型産業に進出し、欧米の基礎研究に対価を払って電子機器、自動車の量産良質生産システムをいち早く立ち上げ成長した。
 この幸運に酔って、モノ作りのみがわが国の産業であり、その海外シフトは国内生産業を空洞化さ世、国家の存立の危機に及ぶとする鋭い説が唱えられている。
 これは今日の経済の構造的変革を理解できないアナクロニズム(時代錯誤)である。
今や先進国度は第3次産業つまりサービス産業就業者構成比で量るのが常識である。
 その機会がモノ作りに派生し、付帯して顕在化し、新たなマーケットを形成しつつある。
 多機能化し高性能化した製品ほど故障の頻度も高く、ライフサイクルも短いというリスクを潜在させており、これが前触れもなく突然に顕在化する。
 たとえば爆発的に普及しているパソコンのネットワークがフリーズした場合を想定する。
修復するまで連絡が途絶え、その間のタイムロスに止まらず、場合によっては長期にわたり工場生産が止まり、企業の存続に関わるような状況に追い込まれることも起こる。
 6シグマ(100万回あたりエラー件数3,5回)といわれても無欠陥ではなく、故障やトラブル発生のリスクは避けられない。
このようなリスクを持つ多機能・高性能の製品を供給する場合、従来のモノ作り重視の発想を貫くことはプロダクトアウトのメーカーエゴ発想に立脚するものといわざるを得ない。
モノ作りそのものが目的ではなく、このようなリスクの犠牲となる最終ユーザーに配慮し、その満足を重視するマーケットインの発想で対応することが求められるのは当然である。
 ここに「モノ作り発想」から「モリ作り付帯サービス業」への発想転換が必要となる。
 これは製造業的サービス業というべきものであり、モノ作りを.否定するものではなく、モノ作りを支援する「サポーティング・インダストリー」とも言うべきものである。
 このことを地域産業集積活性化法は「基礎的技術産業」という新たな用語で具体化した。
 製造業にプラスしてデザイン業、設計業から機械修理業、ソフトウェア業などのメンテナンス業までを地域産業集積の対象と定義したのがそれである。
 最近、本業製品の普及を図る条件として製品に付帯するメンテナンスサービス、補修パーツ提供サービス、消耗品供給サービスなどを付加するメーカーの動きが顕著である。
 例えば空調システムメーカーがモノ作りに加え、省人化と迅速性を兼ねる遠隔運転システムを開発し、そのサービスを製品とともに販売している事例、販売したプラントのファシリティサービスシステムを開発し、設備のメンテナンス、機器調整、設備更新提言などの一切を付加サービスとして提供する事例などがある。
 この発想を一歩進め、商店街の空き店舗に「ハイテク機器何でもサービスセンター」を開設し、使用法教室、クイック修理サービス提供、バーツ・消耗品の販売などによって製品付帯サービスを提供すれば、地域顧客の満足を勝ち取り、集客効果を期待できるのではと思い巡らし、これこそ「究極のモノ作りビジネスモデル」と類推する昨今である。


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