クラプトン発掘調査隊 No.3 戻る
No.3 Nathan East インタビューby Dave Hall
Jam(Flolida's Music Magazine)4/24-5/7,1998
JAM: エリック・クラプトンと同行するようになったプロセスを覚えていますか?
Nathan: 宿命みたいなものだ。フィル・コリンズが BEHIND
THE SUN の半分を、プ
ロデユースしていた。僕がフィルとフィリップ・デイリーとイギリスでいっしょに
仕事をしていたとき、エリックに会ったんだ。フィルが僕たちを引きあわせてくれた。
そして、残り半分のプロデユースをしていた、ワーナー・ブラザースのテッド・テンプルマンや
レニー・ワロンカーにBEHIND THE SUN でプレイするように言われ、いっしょに演ることに
なったんだ。1985年のライブ・エイドで、ばったりエリックに会い、それからも、たまに会ったり
して、「いっしょに演ろう」と言っていた。それから、AUGUSTのレコーデイングをした。
それ以来、ツアーに同行するようになったんだ。
JAM: クラプトンの音楽スタイルは、ここ十年でも頻繁に変化してきてますが、その
度々の変化にミュージシャンとしてどのように対処してきましたか?
Nathan: まわりがどうなってるのか、常に耳をかたむけ、音楽を前進させようとし
続けることだね。エリックだって常に聴いてると思うよ。ときどき会うと、山のよ
うにCDを持ってるもの。彼は目も耳もオープンにし、ビデオを観たりして、最前線
を離れないようにしている。
JAM: ツアーもその一つなんですね。
Nathan: ああ、そうだ。家にいなければ、ずっとそういう聴き方をするのは無理だよ。
だから、彼はベビーフェイスにCHANGE THE WORLDのプロデユースを頼んだんだ。
ベビーフェイスが何をやってるか知ってたからさ。
JAM: CHANGE THE WORLDのサウンドはとても新鮮だから、みんなおどろいたんじゃな
いですか?あなたもその反響の大きさに驚きましたか?
Nathan: うん。僕はそれがすごくいい曲だと知っていたけど、その反響が映画を完
璧なものにした。スタジオで最初に思ったのは「わあ、何だこれは?なんで、これ
演るの?」だったもの。当初はエリックがそれを演るとは知らなかったんだ。ベビ
ーフェイスとはスタジオ入りしてたけど。そして、映画のためだとわかり、それを
聴いて新鮮な気分なった。
JAM: じゃあ、もうスタンダードですね。
Nathan: ああ、そうだね。エリックはそういうアーテイストだよ。彼が楽曲をレコ
ーデイングすれば、それはもうスタンダードさ。
JAM: RETAIL THERAPYはどのようにしてできたのですか?
Nathan: きっかけは、イタリアでのジョルジオ・アルマーニのショウのためにレコ
ーデイングされた数曲で、そこから話がふくらんだ。最後には、名前はださないけ
ど、エリックがプレイするインストルメンタル中心の素晴しいアルバムになったんだ。
だから、だれも本当の事は知らない。
JAM: どうして、RETAIL THERAPYなんですか?
Nathan: エリックは買い物が大好きなんだ。だから、自分の買い物に結びつけたん
じゃないかな。
* * *
JAN: 人生で個人的な悲劇に見舞われたことは、エリックにとっては幾分ほろ苦い時
期でした。それは、バンドの音楽へのアプローチやクラプトンのキャリアに、どの
ように表われていますか?
Nathan: すごく微妙でむずかしい時期だったけど、そのころ、アコーステイックな
曲の多くなるUNPULUGGEDの時代がやってきたんだ。たしかに、とてもエモーショナ
ルな時期だった。
JAM: そういうところで、あなた自身がかかわった時のことを覚えていますか?
Nathan: 数回あったね。コナーはとてもきれいな赤ん坊で、以前一緒にいたことも
あるし、エリックの祖母のロージイーが亡くなったときも傍らにいたし、ステイー
ヴィ・レイ・ヴォーンのヘリコプター事故が起きた後もそうだったから。だから、
感情を激しく揺さぶられることがいっぱいあた。そんなときに言ったものさ。「う
わあ、今度は何が起こるんだろう?」 次から次へという感じだったので、エリッ
クが気も狂わないで、切り抜けたのには驚いたよ。
JAM: そして、それができたことが彼のキャリアを広げ、アーテイストとして成功を
おさめていますね。
Nathan: そのとおりさ。でも、みんなの支えも大きかったと思う。だから、ここま
で来れたんだと思うよ。
JAM: はじめてクラプトンを聴いた時のことを覚えてますか、どういう状況でしたか?
Nathan: 覚えてるよ。クリームの頃で、僕がプレイし始めたときだ。高校のガレー
ジ・バンドのバックで、SUNSHINE OF YOUR LOVEを覚えようとしていて、「ヘイ、こ
いつはクールだぜ」と思ったね。
JAM: そして、今はそれをガレージの外でプレイしてますね。それを彼と一緒にプレ
イするなんて、考えてもみなかった・・・
Nathan: もちろん、思ってもみなかったよ。でも、おもしろいね、なんか巨大で、
完璧なサークルみたいで。
JAM: そのグループのなかであなたを生かそうとするプロジェクトに、あなたは何を
もたらすと思いますか?
Nathan: 先ず、そのプロジェクトに愛をいっぱい持ち込むつもりだ。そのサウンド
が感傷的すぎるかどうかはわからないけど、音楽を通じて友情を育ててみたいんだ。
僕は長いことエリックの崇拝者だったので、とにかく、聴こうとする。そして、
彼とプレイしてると、時々おたがいに考えてることがわかるので、毎晩行く先もわ
からずに旅してるみたいだけど、最後には、なんとか行き着くんだ。
意識的になにかをもたらそうとはしていない。ちょっと、マジックを使うだけだ。
それに、エリックは僕の参加を喜んでくれてると思うよ。僕たちは時々ちがうコー
ドを使ったり、アレンジをかえたり、音楽をちょっとひねるのが好きだから。
JAM: アコーステイック・ヴァージョンのLAYLAがそのいい見本なんですね。
Nathan: そのとおりだ。彼は自分の音楽が前進し、いろんな色に変わってゆくのを
見るのが好きだね。レコーデイングするだけじゃなく、常に成長していく音楽には
とても寛大だよ。レコードは彼の面子なんだ。だから、現に異なったヴァージョン
の歌がある。LAYLAのような。クラシックともいうべき二つのヴァージョンが。
* * *
JAM: どうして、あなたがこのグループのミュージカル・デイデクターに選ばれたの
ですか?
Nathan: いろいろ考えてから、「誰が一番長い?」って言ったんじゃないかな。(笑)
もう一つは、ステージでエリックの隣のポジションは特別なんだ。だから、みんな曲の
休止を知ろうとして、僕を見るんだ。でも、すばらしいグループで、オーケストラも寄せ集め
じゃないし、どんなギグでもこなせる。ステージで、三十人の面倒をみるのはとてもむずか
しいけど、おもしろいよ。
JAM: ここ十年の主だったツアーで、バンドはスポンサーをつけました。今年はレク
サス提供で。これにシラケたりしませんか、スポンサーをつけることと音楽は妥協
できると思いますか?
Nathan: 時代に合ったやり方だね。多くのロッカーが、コマーシャル活動をすれば
ソールド・アウトすると思ってた時もあるけど、スポンサーがつくと、ちがう客層
も来てくれるから、僕はいいと思うよ。90年代は世界がどんどん狭くなってるし。
それに、「魂を売った」などど、難しいことを言うひともいなくなった。多くの
パフォーマーが大会社と提携し、合併してしまった。ビールや煙草のスポンサーと。
ミケロがジェネシスのツアーにからんだみたいに。でも、今はみんな、もっと賢
くやろうとしてるので、アルコールや煙草の会社には手を出さない。レクサスなら
申し分ないね。
JAM: クラプトンのキャリアをきっちりと見ているので、あなたにはポップミュージ
ック全般のムーブメントを示す年表が見えますよね。ザ・ヤードバーズ、ジョン・
メイオールズ・ブルースブレイカーズからクリーム、デレク・アンド・ザ・ドミノス、
ブラインド・フェイス、それからクラプトンのソロの時代。このツアーで、二時間半を
きちんとこなすために、バンドをどのようにまとめていくつもりですか?
Nathan: 最初は新曲から入って、アルバムから数曲紹介し、中盤でアンプラグド・
セット、そして昔のかっこいい曲へもどる。
JAM: 十年も十五年もプレイするのはむずかしいですか?
Nathan: 確かに、創造性へのチャレンジだよ。いつも、前進させる方法を探ってる
から。それに、いいチャレンジだ。そういう歌はプレイしてても飽きないんだ。毎
晩、みんなを旅に連れ出そうと、これらの歌を繰り返しプレイできれば、彼の歌と
芸術性が多くを語ってくれるんだ。僕たちはこれらの歌に、今でも多くの人生を感
じている。まったく、驚くよ。何年経っても、こうやって、僕たちはステージに上
がることができて、毎晩はじめての時のように新鮮なんだから。
訳:Pattie・ターミン
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