研究開発目的のため、以下4つの研究要素に分割して、研究開発を実施した。
●強力酸化分解菌による高速有機分解処理
強力酸化分解菌群の優れて早い増殖速度(倍化時間が20〜30分程度)により、BODの高速処理が可能となり、また、難分解性のPVAの分解活性が高い3種の有効菌の選別・単離にも成功した。これらの菌群の多くは比較的大型のバチルス属、アルスロバクター属に属する常温好気性菌で、増殖が速く、活性の高い分解酵素群を菌体外へ分泌するので、排水中のBOD、CODを炭酸ガスと水に完全分離することが可能であり、汚泥は発生しない等排水処理において優位性を持つ。
●超微細気泡による高速処理システム
新たに研究開発された新エアレーターと高濃度酸素供給試験システムによって、高いDO改善効果が得られ、従来の10倍以上のBOD処理能力(BOD容積負荷 標準活性汚泥法0.5〜1.5kg/ .日以上)がほぼ達成され、CODも従来の標準的な活性汚泥法に比べて8倍以上の処理効果(容積負荷従来法0.1を0.8s/ .日において90%除去以上)が達成できている。
●金属膜による固液分離・遊離菌分離
熊本大学において、特殊金属膜の運転法に関する十分な検討とSSなしの澄明MLSS1300r/Lの高菌濃度培養の実証が行われ、これに基づいて、試験排水処理装置の大型金属膜で実証試験が実施された、大同マルタ染工においても初Flux1.0m/dayを維持しながら連続処理試験を行うことができ、SSフリーの澄明な処理水を得ることができた。目詰まりを起こした金属膜に対しては逆洗浄で物理的に膜表層部に付着している汚泥を除去し、この後、薬品(次亜塩素酸ナトリウム溶液)で化学的に行う洗浄が最も効果的で効率的であることがわかった。また、その結果、膜の清水Fluxが未使用の金属膜の状態にほぼ回復することを確認した。
●排水処理施設でのモデル装置の開発と実地試験
完成した高速排水処理実験装置は所期の装置性能を示し、本装置を利用してPVA分解能の高い強力酸化分解菌、馴養汚泥菌群による排水処理試験が行われた。排水処理データからは、これらの菌群が、実排水処理に利用できる十分な能力をもつことが確認された。最終的に、排水の流入を増やし容積負荷を上げながら最大処理能力の評価を行った。BOD処理能は、標準活性汚泥処理の10倍以上の処理速度(BOD容積負荷 標準活性汚泥法 0.5〜1.5kg/ .日から5kg/ .日以上)、難分解性有機物質PVAに由来するCODは8倍以上の処理効果(容積負荷 従来法0.1を0.8kg/ .日において90%除去以上)であった。
京都大学今中教授が保持している強力酸化分解菌群により、活性汚泥微生物に替わるものとして、その高い有機物の分解効率と優れて早い増殖速度を利用し、排水施設中でこれらの菌群を優先増殖させ、有機物を完全酸化分解するバイオテクノロジーを応用し高い成果が得られた。又、高密度の強力分解菌群を維持し、高い有機酸化分解活性を維持するために必要とされる高濃度酸素供給を、新型エアレーター(同志社大学水島教授、鈴木産業と共同特許出願中)を開発、超微細気泡発生装置(鈴木産業既開発)と酸素発生装置を組み合わせてこれを達成することができた。BOD処理は標準活性汚泥処理の10倍以上の処理速度、COD処理は難分解性有機物質PVAを対象として8倍以上の処理効果が得られた。膜分離には、新開発のステンレス金属膜(熊本大学古川教授の指導のもとに、遊離菌の膜分離のための技術)を使用し、汚泥分離よりさらに高い技術を必要とする遊離菌の膜分離法を古川教授の指導により完成させた。汚泥(フロック)形成しない菌群から処理水を分離する汎用技術により、汚泥の発生なしに有機物の完全酸化分解を可能とする新排水処理システムとなった。以上、本研究開発に於いて、新強力酸化分解菌群、馴養汚泥菌群等の利用と、高酸素供給システムによる難分解性CODを含む実排水の高速排水処理についてはその実用化への目途はついたと考えられる。本研究で開発された PVA分解能の高い新強力酸化分解菌群、 馴養汚泥菌群はそのまま、染色-精錬排水処理に実用できるものである。また、高酸素供給システムも実用排水に提供することが直ちに可能である。
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