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社長の決定 定点観測 「ラスベガス」

(株)武蔵野 代表取締役社長 小山 昇

パソコンショップ「FRY'S」
10月に、なんと2回もアメリカに行って参りました。私は、アメリカに行くと必ず行くところがあります。
パソコンショップの「FRY'S」という店と、皆さんご存じの「ラスベガス」です。
「FRY'S」では、前回の話を本誌Vol.108に書きましたが、マウスの操作が画面タッチで行えるものになっていました。
今回は売っているパソコンが全部音付きに変わっていました。では、何故全部音付きに変わったのでしょうか。
それは、インターネットのメールを送るときに今まではキーボードで送っていましたが、
今、音声でインターネットのメールを送るというのが主流になってきたからです。
こうなると、もうキーボードはなくてもよくなります。
あるいはキーボードやマウスに最小必要限度触れるだけで、メールのやりとりが出来てしまいます。
インターネットでボイスのメールが送れるという時代が来たんだと言うことです。

実は、私がこの技術があるということを知ったのは、アメリカに行く2ヶ月前のことで、
その技術を持っている会社の社長さんから売り込みがあり、その方に会いに行ったからです。
私は、ボイスメールのことだと思って会いに行ったのですが、その会社の社長が持っていたのは、ボイスメモでした。
お互いが都合の良いように解釈していたのです。
そこで、そのボイスメモに入れてインターネットに載せてやるとうまくいくという技術の日本の総代理店をやらないかと言われました。
普通の人ですと、新技術ということでドッと飛びつくのでしょうが、私はそんなに愚かではありません。
やはり、中小企業は大きなマーケットに出てはいけません。
もし、それをやってマーケットが出来たときに、大企業が出てきたらもう終わりです。
中小企業はあくまでも、隙間で生きるのが正しいと私は思っておりますので、この件は丁重にお断りいたしました。
この話があって、そういう時代が来るのかなと思ってアメリカに行ったならば、もう音付きのものになっていたのです。
それも前回の6月から4ヶ月でもう変わっているという、この変わり身の早さには、ビックリしました。
「FRY'S」で気がついた2つ目は、プリンタの売り場面積が倍になったということです。
もちろん主力は日本製で、皆さんがご存じの会社の製品です。
カラープリンタが非常に安くなって、スピードも早くなってきたことを、まざまざと見せつけられました。
また、レジの横にはWindows98はどういう構成かという本が売られていました。

ちょっと横道にそれますが、皆さんは私がこれだけ海外に行くので英語はペラペラだと思われているかもしれませんが、
実は英語がヘラヘラです。何をするにも英語を話さないで、パワーザウルスの手書きメモで書いて、
そしてお金を見せるというやり方です。これで、だいたい通じます。
ラスベガスでショーのチケットを買うときも、全部このやり方で購入します。
ポストスタンプを買うときも、郵便局に行って“70セント×200”とパワーザウルスに書いて、
これと現金を見せて「シート」と言うとポストスタンプが買えます。こういうやり方で、
いままで英語で一度も困ったことはありません。外国人と会ったときはいつも、話さずに筆談です。

ショッピングセンター『BELZ』
今まであまり行かないのですが、今回はショッピングセンターを1つ見てきました。
これは、ラスベガスにある『BELZ(ベゼット)』という何しろ広いところです。
この建物は、安い立地にあります。そして、オールワンフロアーになっているので、
建物がすごく軽量で出来ていて、建物自体もすごく安くできています。そのおかげで、テナント料が安くなっています。
ですから、商品が安く売れます。
例えば「ナイキ」のお店でも、ロサンゼルスにあるナイキタイムで160ドルで買った靴が、そこでは120ドルで買うことが出来ます。
一緒に行った人たちは、同じナイキといっても違うんだということに気付いて、俺の人生は何だったのかと嘆いていました。
この『BELZ』にはいろいろなお店がありますので、ラスベガスに住んでいる現地の人はみんなここに買いに来ます。
現地でない方は、ラスベガスの中のトラジャーアイランドのそばのファッションモールに買いに行きます。
日本の人たちは高いファッションモールで買っています。
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ラスベガス「事業は、何を事業でやっているか」
前回から、ラスベガスに行ってずっと感じていることがあります。
ハートウェアでもお話ししましたが、「事業は、何を事業でやっているか」ということです。
ラスベガスは、なんと言ってもギャンブルの町、カジノの町です。
それなのに、たまたま「サーカス・サーカス」が、
1階がカジノで、2階にファミリー・子供のためのサーカスといった、子供が遊べる遊び場を付けて大ヒットしました。

そのオーナーが、儲かった現金で皆さんご存じのピラミッド型の「ルクソール」というホテルを建てました。
このことが引き金になって、世界最大のホテル「MGMグランドホテル」5005室は、
建てたときにファミリーを大切にと子供の遊び場、そして遊園地も付けました。
その後に出来たホテルも、同様にファミリーを中心にやってきたのです。
でも、そのことをやったので、カジノにとって一番大切なお客様「ハイローラー」のお客様がみんな逃げてしまったのです。
ラスベガスにとっては、カジノで5セントとか25セントのコインでやってくれるよりも、
1人で1日に3千万負けたとか、4千万負けたとか(日本にもそういう人がいましたが)、そういうお客様の方が良いお客様です。
おまけに、現在ラスベガスの売上は、飲食の売上がカジノの売上を超えてしまいました。
ラスベガスの経営者は非常に危機感を持っています。おまけに、儲かっているホテルが、全体の約3割です。
3割が赤字、あと4割はそこそこということです。
つい3年ぐらい前までは、ラスベガスのストリップ街のホテルとホテルの戦いでした。
今は、そのストリップ通りを中心にしたホテル群と、
その周りのだいたい車で走って30分以上のところに出来ているそういうカジノ付きのホテルとの地域の戦いになってきています。
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例えば、ロサンゼルスから車で来る方は、「プリマドンナ」というところで泊まってしまいます。
このホテルは、今から10数年前、ガソリンスタンドにたった5台のスロットマシーンを置いて始めました。
そして、現在3件のホテルを持っています。この「プリマドンナ」は、ものすごく大きいカジノですが、
中は1月にオープンして今ラスベガスで人気の「ニューヨーク・ニューヨーク」のモデルになったところです。
非常に広く、土地の安いところのなので、ものすごく居心地が良いところです。
ところが、それで当たってラスベガスの土地の高いところに建てたから、非常にこじんまりとして居心地が悪くなっています。
そして、ここはつい最近まで世界第1と言われるジェットコースターがあります(今現在は、世界第2位です)。
私も乗りましたが、これでもかこれでもかと心臓が飛び出そうなもので、もう二度と乗りたくありません。

ターゲットは、団塊の世代
そして、なんとカジノですごいのは、やはり換金率が97%だということです。
主力機種は、5セントと25セント。ですから、ご老人は、暇はあるは、金はあるは、遊べるはということです。
そして、ハイローラー以外で一番のターゲットは、団塊の世代から上の方で、この人たちが一番良いお客様です。
まず数が沢山います。お金も持っています。そして子育てが終わっています。ラスベガスでは、今このお客様の取り合い合戦です。
ストリップ街についても大改造されており、MGMグランドホテルもテーマパークが半分になっています。
そしてそこには駐車場ビルを建てて、子供の遊び場だったところは全部ショッピングをする場所に変わってきています。
このようなことで、ラスベガスのストリップ街はシナジー効果が出てきています。
約200件のカジノがストリップ街にあり、15万台という機械が光りケーブルで全部が繋がれています。
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色々なショーからチョイスできるシナジー効果
ご存じのようにラスベガスは、1940年にストリップ街が出来ました。現在は、月に5千人ずつ人口が増えています。
何しろ13年で人口が倍になったのです。
最初からカジノは多く作ったのですが、何故多く作ったのかというと、世界中からお客様を呼ぶ必要があったからです。
そのために、みんなどのお店も競争をしながら切磋琢磨し、協力をしてきました。
そして、そのインフラに対しては無料のインターメント、例えば娯楽を作りました。

有名なのは、トラジャーアイランドの海賊ショーであるとか、
あるいはミラージュを作ったときにクレイジーと言われたのですが火山の噴火ショーをタダで見せたのです。
そういうふうに、どのホテルにも全部ショーが付いています。
もし1つのショーしかなかったら、来る人はチケットを予約しなければいけませんし、チケットが買えなければ来ません。
でも、沢山のショーをやっていますので(1日2回)、そのショーが満席であっても他にも沢山あるショーを見ることが出来るのです。
このようなシナジー効果がでているわけです。ですから、前売り券は必要ではありません(人気のショーは)。
色々なものから選べるようになっています。
人間は何事をやるにも選んでやるという、その人間そのものの持っている属性がうまく活かされています。
また、機械につても日本のパチンコ屋さんですとどういう風に考えているかというと、
機械が高くて満席状態にお客様が入っていることを良いこととしていますが、それは、駅前立地で地下が高く家賃も高いからです。
ところが、ラスベガスは最初原っぱの中に作ったので、広いスペースに沢山の機械を置いて、
いつも自分の好きな機種を選んで遊べるように無駄なスペースをつくっているわけです。
だから、お客様がどんなに増えても、供給が不足するということがありません。
それから、先ほども触れましたが、団塊の世代がずっと増えていきますので、50代が最高のお客様です。
若い人は、収入はあるけれども、子育てのために自分で自由に使えるお金がありません。おまけに、家庭があります。
もし、遊びに来たときに家族が一緒だと、奥さんが一緒ですので気になって集中して遊べません。だから、楽しくない。
ですから、子連れの人はどこに行って欲しいかというと、
ラスベガスではファミリーだけに絞っている「ルクソール」であるとか「サーカス・サーカス」、
あるいはもう来なくて良いということになります。
ラスベガス以外では、「ディズニーランド」あるいは「ユニバーサル・スタジオ」に行っていただきたい。
そのように考えているわけです。
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ラスベガスは“博打”の町
ラスベガスはなんと言っても“博打”の町であり、その原動力となるのは、人と人とのコミュニケーションであり、エネルギーです。
ラスベガスが成功したのは、フーバーダムが出来たからです。
ダムが出来たおかげで水が供給でき、そして電力が非常に安くなりエアコンが発達したからです。
ラスベガスは、暑いところですから水とエアコンは欠かせません。
ラスベガスには、現在年間3千万人の人が来ます。その内の1.5千万人が飛行機で来ます。ここでクイズです。
日本から年間100万人ラスベガスに来るのですが、どうしてラスベガスへの直行便がないのでしょうか。
答えは簡単です。ラスベガスに、仕事で来る人はいません。
遊びで来るから、ラスベガスへ直行便で入っても帰りにロサンゼルスへ寄って行こうとか、
サンフランシスコに寄っていこうということで帰りますから、ラスベガスからの帰りの便が空になってしまいます。
また、ロサンゼルスに来た方がラスベガスから直行便で帰ろうとすると、ロサンゼルスに来る便が空になってしまいます。

さて、それでは何故ラスベガスが“博打”の町になったかというと、フーバーダムを造るときに、1日5千人の労働者を動員しました。
元々、ラスベガスのプラザホテルは売春宿で女性しかいなかったのです。
その労働者が、毎日このホテルに来て酒と女性だけだと飽きてしまい、働く意欲が無くなって別の仕事場に移ってしまいます。
当然フーバーダムの完成が遅れてしまいます。
そこで、何とかフーバーダムを早い期間に造らなければいけないということで、5千人の労働者のためにカジノをつくったのです。
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ストリップ街の飛躍はコンピュータ
また、ラスベガスのストリップ街が大きくなったのは、実はコンピュータです。
私がいつも言っていますが、バックヤードはものすごくコンピュータ化されています。
例えば、先程触れたように15万台のスロットマシーンが光ファイバーで繋がれています。
だから、どこでいくら売れているかということがオンタイムでわかります。
それから、新しいホテルが出来たりすると、既存のホテルは新しい技術を取り入れないと、お客様が満足しません。
どこかのホテルが、新しいことをやるとお客様を取られるので、また投資するという常にエネルギッシュなところなのです。
この1年に3千室以上のホテルが4つ立ち、これから10年間、約1万室以上は出来続けていくという超エキサイティングなのです。

コンベンションは世界一
そして、コンベンションは世界一です。例えば、世界最大のコンベンション「コムデックス」をラスベガスでやっています。
しかし本当は、ラスベガスの人は「コムデックス」に来る人はあまりカジノをしないので来てほしくないと思っています。
でも、何故ラスベガスでやるかというと、東京や北京でやればというのもあるのですが、
あれだけの人が来て1番の問題は何かというと、食事の問題があるからです。
泊まるところではなく、食事が24時間いつでもどこでも出来るホテルはラスベガスしかありません。
だから、「コムデックス」はラスベガスなのです。

ですから、コンベンションとかビジネスのお客様、かつハイローラーの人に絞りながら、
各ホテルが自分のお客様はこうだという絞り込みをしているわけです。

歓迎されない、日本人、家族、若者
それから、海外からラスベガスに来るお客様の数のNo.1はカナダ。2番がイギリス、3番がドイツ、日本は今4番です。
でも、日本が2番から1番に行くのは時間の問題です。但し、日本人はラスベガスにとって、歓迎したくないお客様なのです。
何故でしょう。日本人はカジノをやって4千円くらいやって負けると損したと言うからです。
ラスベガスの損益分岐点のお客様は4万円です。だから、日本人のツアーはごく一部特定のホテルしか取れないのです。
今回私が泊まったのはラスベガスNo.1の「ミラージュ」というホテルです。
何しろ今まではツアーをとらないで有名なホテルなのですが、そこに日本人でツアーをとったのは今回初めてかもしれません。
かつ、全員シングル。これはたぶんはじまって以来です。
それが、20数名の人たちが社長さんばっかりだったらすごいけれども、社長はたったの3人で、
後は各社の幹部社員だけでオールシングルということです。
何故オールシングルにしているかというと、
それは研修が目的で同室の人に気を使ってほしくない、気を使う暇があったら勉強してほしいと思っているからです。
ラスベガスは、滞在日数が非常に長いところです。ですから落とすお金も多くなります。
普通の人は4泊し、ギャンブルは1日約4時間やります。そして、なんと6千億円を落としていきます。
でも、実体はホテルや食事・ショッピングを合わせると2兆円のお金がラスベガスに落ちていきます。
平均は、660ドル×125円になっています。
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先ほどもお話ししましたが、全体として家族を歓迎していないのは、
子供がいるとカジノをやる人がお金と時間を奪われて気分がすぐれないからです。
ですから、MGMがオープンしたときに、「オズの魔法使い」をテーマとしてやったのですが、今は潰れています。
そこも今は、ビジネスセンターになって、コンベンション用の部屋を沢山つくっています。

それから、ラスベガスは本音では20歳代の人たちを歓迎したくない。
日本人の場合は、先ほど言ったようにお金を使わない。だから、一番良くないお客様です。おまけに、ひどい人は1泊しかしない。
ほとんど90%以内は、2泊以内。3泊する人は10%以内で、4泊する人はクレイジーです。
ところが、外国人は4泊4日が普通です。

ハードロックカフェというのがあるのですが、そこはプレスリーとか有名なスターの衣装やCDを売っています。
でも、そこでカジノをやっている人はいません。
そこのバーは、若い人が恋をして愛を語っているからアルコールが高く、他のところは非常に安いのです。
高い理由は、若い人が愛を語っているときにカジノをやれば、
ねえちゃんあんちゃんにブッとばされてしまうためにギャンブルをしないからです。

日本人は、仲間といるときには博打のことを考えません。皆さんもそうでしょう。
でも、ラスベガスは博打をやってもらわないと困る場所なのです。


口コミ宣伝で大きくなっている
ラスベガスは、カジノの町ですから博打は勝つか負けるしかありません。
では、ラスベガスに来て10万円を損したということを皆さん奥さんとか旦那さんとか恋人にお話しますか。
「何でそんなカジノなんかをやって負けて」と言われるから、話さないのです。
ところが、勝ったときは「勝った、勝った。儲かったよ。」と言いふらします。
そうすると、買った人は話す、負けた人は黙っている。
でもここで大切なのは、負けても何か良い楽しい思い出(ショーも楽しいとか食事も楽しいといった思い出)があるということです。
楽しい思い出があれば、負けても悔しいから「負けた」とは言わないで「ラスベガスは楽しかったよ」と言います。
というわけで、勝っても負けても、ラスベガスが口コミで宣伝されて大きくなっているわけです。それは、ギャンブルのおかげです。

それから、ラスベガスは不正をしません。というのは、全部カメラがついていますから。
ですから、例えばミラージュで何かをやると3分で来ます。そして、ディーラーとかそういう人たちの態度が非常に良いことです。
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権限は、下に降ろせばお客様が喜ぶ
今、ラスベガスの「ハーラーズ」などは、何をやっているかというと、勝った人よりも負けた人を大切にしています。
このハーラーズというホテルは、サービスがNo.1ではないかと言われています。
このホテルは、どうしてお客様に対して接客が良くなったかというと、普通のホテルは無料お食事券をマネージャーが持っていますが、
このホテルはドアボーイとか両替の人とか掃除をしている人たちに、“あなたの権限であげて良い”といって渡したのです。
食事券をあげる権限を、そういう人たちに渡したのでスキルが上がったのです。
私は、すごく勉強になりました、権限は上が持つのではなくて、下に降ろせば降ろすほどお客様が喜ぶのだということを。
(つづく)

この連載は、マイツールユーザーズグループ(MUG)が会員向けに発行している「マイツールMAGAZINE」に掲載しているものです。
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