社長の決定 定点観測 「ラスベガス」
(株)武蔵野 代表取締役社長 小山 昇
ラスベガスの繁栄
1948年に、バグジー・シーゲルという人が自分の愛人の名前がフラミンゴだったことから、
その愛人の名前をとって作ったのがフラミンゴというホテルです。
現在は、ヒルトンが買い取ってフラミンゴ・ヒルトンと言っています。
それから、ミラージュが出来るまでの12年間、ホテルは出来ませんでした。
このミラージュを作ったときに、屋外でショーをタダで見せることが始まり、この時からまたラスベガスに人が来るようになったのです。そして5年前に、MGM、客室数5005室のホテルが出来ました。
ラスベガスの繁栄は、お金がお金を呼ぶことです。
今、ラスベガスではホテルを造るのに、3000室位のホテルだと1年で建ってしまいます。
ニューヨーク・ニューヨークというホテルは、たった1年で出来ました。また、市も税制を優遇しています。
だから、そこにどんどん再投資ができるようになっているのです。
でも、換金率はラスベガスの近くにあるホテルには及びません。
カジノのディーラーなどはどこで遊ぶかというと、絶対にそのホテルでは遊びません。
ディーラーや現地の人が行くホテルは、そこからちょっと離れたところにある換金率が98%のところです。
中には、ここは100%ですよというところもあります。誰か負けても、必ずある期間中に100%回収出来るところです。
また、使った金額の50%が返ってくるところもあります。もちろんラスベガスのホテルでも、そういう制度はあります。
でも、日本のお客様は知りません。

お客様を飽きさせないフロント
いくつかのホテルの変わっているところを、具体的にご紹介しましょう。
まず、私がいつも定宿にしているのがトラジャーアイランドホテルです。
ここは、フロントが変わっていて、フロントの後ろがプールになっています。
このフロントの後ろのプールは、水着を着たおねえさんたちが、丸見えになっているので飽きません。
不思議ですが、よく見えるところはかわいこちゃんが来るけれども、早く生まれたおねえさんがたは、何故か遠くにいきます。
トラジャーアイランドの他にも、ラスベガスのホテルのフロントはみな変わっています。
例えば、MGMではフロントの後ろが画像になってます。
その画像は、スターが映し出されたりしていて、お客様が飽きないようになっています。
また、ミラージュというホテルのフロントの後ろには、熱帯魚の水族館があります。
これがどのくらいの大きさかというと、高さ5m横40mぐらいあります。
どうしてミラージュがそういうことが出来るかというと、ミラージュの敷地内にはイルカのショーをやっているところがあります。
そこにはイルカの海水をメンテナンスする1機5千万円かけた機械が2機あります。
この海水を巡回している機械を使って、そこからパイプラインを延ばして使うことが出来るのです。
このように、どのホテルも色々工夫しています。
このミラージュというホテルは、No.1と言われていますが、私も実体験からそう思います。
ミラージュで私が電話を掛けながら隣にあったコップを落としてしまいました。
カチャッと音がしてどうしようかと思ったら、掃除の人がスーッと来てきれいに素早く掃除していったのです。
これには、本当にビックリしました。もちろん掃除をする人は、普段は見える場所にはいません。

ホテルの囲い込み
またミラージュというホテルは、相変わらず人が流れるように歩いています。
ここでは、タイガーを使ったマジックショーが行われていますが、本当に素晴らしいショーです。
私は、ラスベガスに行くと3日間泊まって4つのショーを見ます。ですから、ほとんどのホテルのショーを見ています。
私が思うに、ラスベガスベスト3のショーは、1番がトラジャーアイランドのミスティア、
2番目がミラージュでやっているマジックショー、3番目がモンテカルロでやっているダンクハートだと思います。
このベスト3のショーには、共通した点があります。それは、3つのホテルのオーナーが皆同じということです。
そして、このオーナーが同じいくつかのホテル(グループ)は、
自分のホテルから同じオーナーのホテルに行けるように全部つなげています。
例えば、ルクソールとエスカカリバー、トラジャーアイランドとミラージュ、
MGMとニューヨーク・ニューヨークは同じオーナーなので、それぞれをつないで、皆歩いていけるようになっています。
ホテルの2階から2階へと。また、バリーズとMGMは、通路ではなくモノレールを作ってホテル間を行き来できるようにしています。
お客様を、違うホテルではなく、同じ資本のホテルに誘導するようにできているのです。

ショッピングスペース − ルクソール
またラスベガスは、どこのホテルもショッピングの売り場面積が、この1年で倍になりました。
ルクソールというピラミッド型のホテルでは、
2年前までホテルの下にゴンドラ(船)が流れていて、ホテルの中を見られるようになっていました。
しかし、今はそこを全部つぶして、ほとんどがショッピングをする場所に変わっています。
そして、今までラスベガスに無かったものがそこにできました。それは、写真屋さんです。
ラスベガスには写真を撮って1時間以内に現像してくれる写真屋さんが今まで無かったのです。
私が思うには、次に行くときには全部のホテルにできていると思います。
それから、ルクソールはレストランが倍の広さになりました。ハーレーダビットソンが経営しているレストランは、いつも満員です。
最初私はハーレーというので、オートバイの部品でも売っているのかなと思っていたのですが、レストランだったのです。
全米売上No.1のフォーラムショップ
今、アメリカで一番売れているショッピング街は、ラスベガスにある「フォーラムショップ」で、全米平均の4倍の売上があります。
このフォーラムショップも、つい最近面積が倍になりました。有名なカルチェとかヴィトンとか、何でもあり、お客様が非常にたくさん入っています。そこに、今度新しいバッカスのショーができました。
これは感動モノです。ここに、奥さんや彼女を置いておけば2、3時間くらいカジノをやっていても大丈夫です。
買い物がすごく楽しいのです。
このフォーラムショップは、今まであったものにプラスしたものです。アメリカは日本に比べれば、土地が広い国です。
でも、ラスベガスのようにどんどん増築していくとスペースが無くなってしまいます。
では、どうして増築してプラスしていくことができるかというと、それは駐車場を利用するからです。
ラスベガスは、トラジャーアイランドができるまでは、全部平地に車を置いていました。
新しいホテルや増築をしていくと、どんどん土地が減っていきます。
そこで、トラジャーアイランドが始めてタワー(日本で言う駐車場ビル、立体駐車場)をつくりました。
今は、ほとんどのホテルがこの駐車場ビルになっています。この駐車場ビルにして空いたスペースに、どんどん増築しているのです。
経済は正札を見る
日本は、金融恐慌で株価が下がったりしていますが、私はいつもアメリカに行って何を見ているかというと、経済を見ています。
日本の経済とアメリカの経済は、ちょうど今逆転しているというのは、皆さんもご存じのことと思います。
そんな中で、経済のどこを見ているかというと、売っている正札の金額の最後の桁を見ています。
例えば、29ドル99セントというのは、景気が良いのです。最後が9の時は良いときです。
次にいいのは8です、26ドルは駄目で、26ドルの次は25ドルではなくて24ドル99セントです。
一番駄目なのは、5です。50%オフというのは一番駄目なときですから。
私はいつも言うのですが、最後の桁が9だということは、日本でも世界のどの国でも、
その国の経済がしっかりしている、好況だということです。ですから、経済の指標とかそういうものはいりません。
このように、私はいつもここではこういうことを見なさいと、実体経済を見ることを皆さんにお話ししています。
何故、ラスベガスを幹部研修の場所に選んでいるかというと、それは、楽しいからです。
そして、私はいつも楽しいことを体験させて、その後にミニセミナーを行います。
これは、何でこうなっているか、あーなっているのかと。それを普通の人は机に座ってセミナーをやります。
勉強というのは本来みんな嫌いです。ところが、遊びとか楽しいことをすれば興味が沸いてきます。
カジノで負けないためには…
私は、どこのホテルに泊まっても、いつもやることがあります。それは、カジノを見て回ることです。
私は、これだけラスベガスに行っていても、今までカジノで負けたことは3回しかありません。
何故負けないのかというと、簡単です。どこの台が出ているか全部見て回るからです。
普通の人は、着くとすぐにカジノをやるから負けるのです。私は、朝・昼・晩と1日3回2日間見て、
どの台とどの台が出るか判ってからやります。フラミンゴに出ることで有名な台があります。
その台は3台あるのですが、200%出ます。私は、そのことをフラミンゴのある偉い方にお話ししました。
「フラミンゴで一番出ている台は、これですね」
そうしたら、
「You're crazy. 人に言うな!」
と、言われました。でも、言わなくてもそこにはいつも人がたくさんついています。
カジノをさせる努力 − リオ
やはり、会社というのは工夫しなければいけないなと思ったのは、
ラスベガスのストリップ街からチョット離れたところにリオというホテルがあります。
ここは、今はタワーを増築しましたが、その昔立地が悪いのでお客様を呼ぶためにエロチックなショーを売り物にしていました。
それが、今度はオーナーが変わって、離れたところにタワーをつくりました。そこには、日本人はほとんどいません。
ヨーロッパと地元のお客様をターゲットにして、パチンコで言うと玉を沢山出すようにカジノの換金率を非常に上げています。
でも、ここは今すごいのです。何がすごいかというとそこのショーが素晴らしい。
昔、赤坂ミカドにゴンドラに乗ったショーがありましたが、そのゴンドラがそこは6機あって、
1つのゴンドラに人間が20人以上乗って動いています。
10分間のリオのカーニバルの雰囲気のショーでもちろんタダですが、これはすごいものです。このゴンドラの下がカジノになっています。ショーが始まるのを待っている間、ここでカジノをやります。
そして、2階席はショッピング街になっています。
そこですごいなと思ったのは、ショッピング街でこのショーを見た方が見やすいのですが、
ところが下のカジノにいる人にゴンドラから食事の無料券を撒いたり、ネックレスを上から投げたりしてくれるのです。
上では取れないですから、みんな下に来ます。そして待っている間カジノをやるのです。
カジノをやる、させるということについて、いろいろ考えています。
例えば、フォーラムショップから出てきてシーザスパレスに行くときに、ラクチンな動く歩道(エスカレータ)に乗って行くと、
必ずカジノに入ってしまいます。カジノを通らないとフロントへ行けないという仕組みにどこもみんななっています。
これでもかこれでもか。

会社も地域も良いときにお金を掛ける
ラスベガスに行っていつも思うことがあります。
ダウンタウンにある「フリーモント・ストリート」では70億円掛けた120万個の電球のショーをやるのですが、
そこに夜7時、8時、9時に皆が集まり5分間のショーを見るのです。素晴らしいショーで感動します。
でも、終わるとみんなまた帰っていってしまいます。
この「フリーモント・ストリート」」は、ダウンタウンからストリップ街に流れたお客様を呼び戻すためにつくられたものですが、
そこで、私はいつもメンバーの人たちに
「会社も地域も駄目になってから、どんなにお金を掛けても駄目なのです」
ということを教えています。
ラスベガスというところは、皆さんもご存じのようにタワーがたくさんあります。
あるタワーホテルは、カジノをオープンしてすぐに銀行管理下に入りました。
何故かというと、ホテルは半分しかできていなかったので、カジノだけオープンしたからです。
だから、すぐに銀行管理下に入ってしまったのです。要するに、カジノだけではお客様が来ないのです。
そのホテルは倒産寸前だったのですが、現在はカジノに人を集めています。
何故かというと、日本のパチンコ屋さんの新装開店と同じように、100%出すからです。
またそのタワーの上(東京タワーより上)には、ドーンと急に上がったり下がったりするビッグショットというのがあります。
そして東京タワーと同じ高さには、ジェットコースターがあります。オープンした当時、そこから人が飛び出て死にました。
それで人気が出たジェットコースターです。
あるジェットコースター(世界一のプリマドンナという)ですが、体が外に飛び出ないように日本だと安全のため肩から掛けるようになっていますが、ここではベルトだけです。日本では、絶対許可にならないのではないかと思うのですが。
そして世界一長いジェットコースターで、もうお尻がガタガタしていい加減にしてくれ、と言いたくなってしまうくらいすごいものです。

アメリカはボイスメールの社会
ラスベガスのホテルは、全部ボイスメールになっています。私の本は、本当の話はボイスメールネットワークなんです。
ホテルなどに入っているのは、ボイスメールです。留守番電話と同じようなもので、外からでも聞くことができます。
ボイスメールで1つ、ロサンゼルスからラスベガスに行く飛行機の中でこういうのを見つけました。
飛行機の座席の背もたれの中に入っていたもので、GTEエアーホンの広告です。
GTE Airphone
・Why wait?
・Check voice Mail
・Call me office
・Phone the kids
「何故、待つの?」の次に「チェック・ボイスメール」と書いてあります。2番目に「会社に電話しなさい」。3番目が「子供に電話しなさい」。この「チェック・ボイスメール」が一番頭にきているというということは、アメリカはボイスメールの社会だということを表しています。このエアーホンは、クレジットカードの番号を入れれば、即電話ができます。
何故、ラスベガスにいる人はみんな明るいのか?
私は、どうしてラスベガスの人は明るいのだろうといつも気にしていたのですが、今回やっと気がつきました。
それは、こういうことです。
アメリカという国は車社会です。日本の田舎も車社会です。
でも、車社会のアメリカといえども、ラスベガスに来るとそうではなくなります。
車を駐車場に置いてホテルに入った瞬間、歩かなければいけません。
食事に行くのでも、カジノに行くのでもすべて歩かなければいけないのです。
ホテルの中の一番大きいカジノは、はじからはじまで25分かかるのですから、行って帰ってくるとなると50分歩かなければなりません
このようにラスベガスでは、皆歩くから健康です。
そして、お金もあります。だから明るいのです。このように、ラスベガスのカジノあるいはホテルは、
車社会でなく歩く社会になったのですが、結果的にそれが人間そのものにとって健康に良いところになったということです。

吸ったままやめられる禁煙シール
今回のラスベガスで、タバコを吸ったままやめられるという禁煙シールを見つけたので買ってきました。
普通、タバコをやめるには禁煙してやめるのですが、これは吸ったまま禁煙できるというものです。
最初は、21g位(タバコ2箱分くらい)のニコチンのシールを腕に1週間貼ります。
21gのニコチンが一度に入ってくるから、気持ちが悪くなります。瞬間的にタバコを2箱吸ったと思えば判るでしょう。
だから、いつもずうっとむかついている気分になっていて、普通に吸うタバコが当然美味しくありません。
それで、タバコの本数が減ってきたらシールを14gにして貼ります。その次は7gと。
今、2人の人に実験しています。1人は、我が社の部長で、この部長は1日2箱吸っていました。
アメリカに行っているときは1日2本から5本位だったのですが、
日本に帰ってきてからはストレスがあるのか1日10本位吸っています。それでも2箱から10本に減っています。
以前にご紹介しましたが、我が社では課長以上でタバコを吸わない人は年間30万円、係長以下は20万円の禁煙手当が付きます。
残念ながら、この禁煙シールは日本ではまだ許可になっていません。
この禁煙シールのことをある人に話したら、その人は酒のもあればいいのにと言っていました。
でも、我が社では禁酒シールはいりません。逆に、酒が駄目な人には無理矢理飲ませて飲めるようにしているからです。
それは、何故かというと、酒が飲めない人が長になると、コミュニケーションができないから、その部門はだいたい成績が下がるのです。不思議なものです。飲みュニケーションは大切です。
ラスベガス研修での2つの義務
今回、ラスベガスに一緒に行った人たちに2つ義務づけました。
1つは、自分が見て驚いたことや勉強したことを、必ず1人最低50個書き出すことです。
中でも、我が社の社員と中村理科工業(株)の中村社長さんは、シードということで80個です。
50個あるいはシードの80個に満たないと、罰金として1個につき1千円を徴収します。
それからもう1つは、日本にハガキを20枚出すことです。これも、1枚不足ごとに1千円の罰金を取ります。
ハガキを20枚書いたかのチェックは、20枚書いてきたポストカードを私に見せたら、切手を20枚あげます。
これで、チェックします。
何故、ハガキを書かせているかというと、こうやって研修に来られるのは、
会社の上司や同僚、あるいはお客様など、いろいろな人たちが支えてくれているからです。
ところが、皆普段ハガキなんて書いたことがないので、書きたくないわけです。
でも、1枚も書かないと2万円取られるのがいやだからしょうがなく書きます。
このお金が取られるのが嫌で書くということは動機は不純ですが、もらった人は感激するわけです。
こういうことが、人間は大切です。
私はいつも、勉強をするのに動機は不純でいいと思っています。意欲がある必要はいりません。
この連載は、マイツールユーザーズグループ(MUG)が会員向けに発行している「マイツールMAGAZINE」に掲載しているものです。
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